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フレッシュなスタイリング、パワーアップ そして、新たな自信

アストンマーティンラピード」は今からほぼ3年前にデビューしたが、以前Autoblogに掲載した試乗記で、筆者は同車を「世界で最もルックスの良い4ドアセダン」と書いた。その言葉は今でも正しいと思っている。あの時、我々はマイアミからカルフォルニアのパームビーチまでラピードのハンドルを握った。そして、長旅の末、"イギリスのメーカーが角度によってはクーペに見える、他に類がないほど素晴らしいセダンを生んだ"と結論付けた。確かにラピードは、アストンの2ドアのモデルと比べれば、スペースもあり実用的でもあった。そういった意味では、アストンマーティンの目的は達成されていただろう。しかし、我々がラピードのパフォーマンスに物足りなさを感じたことも事実だ。今回は、一見するとラピードとすっかり変わったように見えるラピード Sについて語る前に、まずは先代のラピードについて振り返ってみたい。




2009年のフランクフルトモーターショーで発表されたラピードは、現在のアストンマーティンの全モデル(エントリーモデルのヴァンテージからトップモデルであるヴァンキッシュまで)と共通した押出成形によるVHアーキテクチャのシャシーを採用している。つまり、自慢の航空テクノロジーを活用し、アルミニウム・コンポーネントをボンド固定したシャシーを製造し、その上をコンポジットやアルミニウム、スチールでできたボディパネルで覆っているのだ。

最初のラピードは2010年モデルとして登場した。搭載されたエンジンは手組みによるオールアルミ合金製48バルブ、6.0リッターV型12気筒。自然吸気で排気量は5,935cc、最高出力は470hp/6000rpm(日本公式サイトでは477ps)、最大トルクは約61.2kgm/5000rpmを発揮する。カーボンファイバー製のプロペラシャフトがミッド・マウントされたアストン独自のオートマチック、「タッチトロニック2」(ZF製のものにアストンが手を加えている)に動力を送り込み、そのパワーは標準装備のリミテッド・スリップ・ディファレンシャルを通して後輪に伝えられる。

アストンマーティンはラピードの2013年型モデルを発表せずに、大幅にアップグレードしたラピードSを発表したのである。その出来は、「S」のバッジをつけるに相応しいモデルと言える。



ラピード Sは、最新のAM11型6リッターV型12エンジンを採用したことで、ラピードより80hpのパワーアップを実現した。このパワートレインは、ヴァンキッシュと同じもので、スロットルボディの拡大、インテークマニホールドの改良、デュアル可変バルブタイミングの採用、フューエルポンプの向上、CNC加工された燃焼室や中空カムシャフトの導入と、ラピードのエンジンと比べ、大幅な改良が施されている。その結果、最高出力は550hp(558ps)/6750rpm、最大トルクは約68.2kgm/5500rpmとなった。最高出力はヴァンキッシュの565hpより若干落ちているが、ラピード Sの方がより低い回転域におけるトルクが太い。6速AT「タッチトロニック2」とリミテッド・スリップ・ディファレンシャルはラピードから引き継いでいるが、新型のパワートレインに合わせてチューンアップされている。

アストンマーティンによると、ラピード Sの重量は1990kg。0-60mphは4.7秒とラピードより0.5秒速い。最高速は190mph(約306km/h)だ。

アストンマーティンは単にエンジンをアップグレードしただけではなく、パフォーマンスの向上、そしてラグジュアリーなスタイルの追及を忘れてはいない。

サスペンションは「ADS(アダプティブ・ダンピング・システム)」を標準装備する独立懸架式ダブルウィッシュボーン。ADSは路面の状況やドライバーが選んだ走行モードに合わせてサスペンションの硬さを変えることができる。ラピードでは2つのモードだったADSは、ラピードSではNormal(ノーマル)、Sport(スポーツ)、Track(サーキット)の3つのモードから選択できるようになった。ブレーキはフロントが6ピストン、リアが4ピストンのキャリパーとなり、スロット付きの鋼鉄ローターを締めつける。タイヤはラピードと同じ20インチのブリヂストンPOTENZA(前輪が245/40R20、後輪が、295/35R20)だ。

タイヤ以外は目に見えない部分について語ってきたが、ラピード Sのスタイリングの変化は誰の目にも明らかだ。アストンマーティンはフロントとリアのデザインを再構築し、エアロダイナミクスと安全性の向上を実現した。しかも、美しさは損なわれていない。リアに大きなダックテール風のスポイラーが備わったことで、高速走行時に十分なダウンフォースが得られるようになり、ドライビングの安定性、グリップ感が強まった。しかし、最も特徴的なのはフロントグリルだろう。ラピード Sの大きなグリルはデザインの変更という目的もあるが、実はこのグリルにはアストンマーティンの伝統的なデザイン・スタイルを保ったまま、ヨーロッパの厳しい歩行者保護基準を満たす役割も担っている。他社のようにプラスティック製グリルを使用して安全基準をクリアするのではなく、アストンマーティンは特許申請中の「キーストーン」構造を採用。これは、衝突時にグリル全体が内側へ押し込まれ、衝突エネルギーを吸収することで、アルミニウム製のフードをあまり変形させず、歩行者の衝撃を和らげることができるという。また、フードの下に収まっているエンジンの搭載位置が、ラピードに比べ19mm低くなっている。これによって、フードとエンジンの間に十分な隙間ができ、クッションの役割を果たす。また、重心が下がりハンドリング性能も向上した。




インテリアに目を向けると、オプションパッケージでスポーティー感、ラグジュアリー感を演出できる。例えば、インストルメントパネルやセンターコンソール、ドアハンドルに艶が美しいピアノ・ブラック、天井の内装に淡いブラウンかグレイを選択してみるのはどうだろうか。また、試乗車のインテリアはシートとドアのインナーが黒に赤のステッチ入りだったが、新しくオプションとしてレッドとブラックのデュアルトーン穿孔レザーも加わった。これは、レザーにドット状の穴が開いているツートンカラーのインナーだ。ちなみに試乗車には、オプションのリバースカメラと後部座席にツインスクリーン・エンターテイメントシステムが装備されていた。もっとスポーティー感を強めたいという人には、カーボンファイバー・エクテリアパッケージが用意されている。フロント下部のスプリッター、ドアミラーキャップ、テールレンズ回り、バンパーカバーに織り地の美しいカーボンファイバーを選択することができる。こういったオプションに物足りなさを感じている人には、顧客の様々な要望に応えるパーソナライゼーション・プログラム、「Q by Aston Martin」をお薦めしたい。ただし、お財布の中身と要相談になることは間違いない。

気になる価格はほぼ20万ドル(約1950万円)と、最近、デザインが変更されたベントレー「フライングスパー」(米では20万500ドル~)に挑戦状を叩きつけているかのような設定だ。我々は新型のフライングスパーには未試乗なので、現行モデルとの比較しかできないが、ラピードSはその価格に値すると自信を持って言える。新型のフライングスパーの試乗後には、もっとはっきりしたことが言えるだろう。




ラピードSの外観の美しさについて、否定的な意見は一切、聞いたことはないし、筆者も同意見である。ジュネーブモーターショーの写真を見た時には、8本のバーがついているグリルは大きすぎて見苦しいと思ったのだが、実際に見てみると、このニコっと笑っているような顔つきのグリルはアグレッシブかつ力強い印象をもたらしていた。リアスポイラーもより目立つデザインに変更されている。ノーズから始まったラインはテイルに向かってなだらかに繋がり、スポイラーでぐいっと跳ねあがって終わっている。また、我々自身も、最初に見た時には気が付かなかったことだが、黒く塗られたBピラーが窓ガラスの後ろに隠れているのである。クーペに見えるように工夫されたデザインなのだ。

ラピードのコックピットは非常に高級感はあったが、それでも、人間工学的な問題があった。残念なことに、ラピードSでもその印象は変わらなかった。スイッチ類はガラスと艶消しアルミニウム製で触り心地も良く正確性も高かった。しかし、スイッチの位置が分かりにくいのだ。もっとも、最初のうちはイライラするが、数日間、乗り回していれば慣れてしまうものとも言える。




ラピード Sのリアシートのスペースは見た目ほど、窮屈に感じなかった。テストの意味で、大人と子供にそれぞれ座ってもらったが、座り心地もバックレストの評判が良かった。そのおかげで、決して広くはない足元がさほど気にならなかったのかもしれない。後部座席を倒すとリアの収納スペースは拡大され、後部のハッチから全ての荷物に手が届く。ただし、(荷室の前方に見える)シートバックのレザーを傷付けないように、ラクロスのラケットのようにものを入れるときには厚い毛布を用意する必要があるだろう。

ラピードと比較しながらエクステリアとインテリアを見てきたが、最も大胆に改良されたのは、フードの下に収まっているエンジンである。それこそ我々が望んでいたことだ。

80hpのパワーが追加されるというのは、ドライバーにとっては夢のようなアップグレードだと言える。V型12気筒エンジンは、スタートアップから唸り声をあげ、フルスロットルでは低く、かすれたような轟音となった。ラピードがだらしなかったというわけではないが、もう少し路面を蹴飛ばすような感じが欲しかったのも事実だ。その点、Sは550hpに向上したパワーが流線型のスタイルに相応しい速さを発揮する。




この5.9リッターV12は、古典的なパワーの出方をする。タコメーターの針が上限まで上がることを、エンジン自体が楽しんでいるのだ。低回転域でのトルク性能は申し分ない。しかし、パワーは3500rpmを超えてから力強さを発揮する。もちろん、酔いしれるほどのサウンドを奏でてくれたのは言うまでもない。(ビデオでぜひ、サウンドをお確かめいただきたい)。

ほとんどの場合、「タッチトロニック2」は標準的なシフト・チェンジを行うデフォルトの「D」にしたままドライブすることになるだろうが、我々は、「スポーツ」モードを試してみた。このスポーツモードにすると、より高回転に達してからシフトアップするようになり、ギア比の高い6速には入らずに12気筒エンジンを回し続ける。アストンマーティンの素晴らしい点は、オーナーが設定したモードが、一度エンジンを切った後で再スタートする時にも維持されていることだ。また、ステアリング・コラムに装備されたパドルシフターは実に楽しいのだが、エンジンがあまりにもスムーズで高回転まで回りたがるため、我々はついシフトアップするのを忘れてしまい、たびたび燃料カットオフのお世話になった。その代わり、減速時にはパドルを使って積極的にシフトダウンした。5.9リッターのエンジンブレーキの効きが最高に良かったからだ。もちろん、このようなドライブのやり方で市街地走行を試みるのは、燃費効率にとっては良くない。さらなる好奇心から、高速道路ではスポーツモードを切って走行してみた。長めのドライブだったが、車内のコンピューターでは燃費は、約8.5km/ℓを示していた。V12としては悪くない燃費だろう。



アストンマーティンは、アダプティブサスペンションも向上させたというが、ラピードとの違いは良く分からなかった。我々は試乗中のほとんどの時間をデフォルトの設定にしたままであったが、しかし、それでも、ラピードSは驚くほどの操縦性を見せた。ボディは少しロールするがアルミニウム製のシャシーは、コーナーでも安定し、しっかりと路面に食いついていた。エンジンの搭載位置が低くなったことや、分厚いタイヤのおかげもあり、コーナリングでの能力は格段に上がっている。マルチピストンブレーキは、ドライバーの指示に従ってきちっとスピードを落としてくれる。アストンマーティンの市販モデルでは最も大柄なこのラピードSにも、ドライビングの喜びはしっかりと付属してくるのだ。

アストンマーティンを買うような人に、試乗記などあまり意味をなさないのかもしれない。セクシーなこの4ドアセダンはショールームでの姿だけで十分、ワクワクさせてくれるからだ。しかし、550hpに向上したV型12気筒エンジンを搭載し、新しいグリルを身にまとったラピードSは、ラピードとは違う世界をオーナーにもたらしてくれるだろう。流れるように美しい車でありながら、青信号に変わったときに他のクルマに出足で後れを取り、ハンドルの後ろに隠れたくなってしまうような恥ずかしい思いはもうしなくて済むのだ。ラピードSは、見た目の美しさと同じくらい素晴らしい中身を持ったセダンだ。

【基本情報】
エンジン: 5.9リッターV型12気筒エンジン
パワー: 最高出力550hp(558ps) 最大トルク457lb-ft(約63.2kgm)
トランスミッション: 6速AT
0-60mph : 4.7秒(メーカー計測値) 
最高速: 190MPH(メーカー計測値)
駆動方式: 後輪駆動
車両重量:4,387ポンド(約1990kg)
座席数:4
希望小売価格: $199,950(日本販売価格 23,058,457円)

By Michael Harley
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
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