【試乗記】「EVの中ではベスト。でも米仕様のナビは最悪!」 フィアット「500e」に乗る
Related Gallery:2013 Fiat 500e First Drive Photos


今夏、米カリフォルニアで発売される予定のEV、フィアット「500e」。今回の試乗記は、走るのが楽しくなる、街乗りにピッタリな同車のレポートをお届けしよう。

昨年の12月からメキシコのトルカにある工場で500eの生産を始めたフィアットだが、どうやら500eを本当に必要としている人にだけに売りたいらしい。フィアットは近々、500eのオーナーにふさわしいかどうかを診断する"適正チェックサービス"を公式ページに設けるという。恐らく適正チェックにパスするのは、車での通勤距離が短い人、新しい技術を理解している人、自宅で充電ができる人などではないだろうか。まあたとえパスしなくても、きっと別の500モデルを紹介してくれるだろうから、心配することはない。



500eの価格は3万2500ドル(約334万円)と他のEVと比べて大差はない。カリフォルニア州では補助金制度により実質価格は2万500ドル(約211万円)になる。注目したいのは、お得なリース契約だ。期間は3年で、契約時に999ドル(約10万円)、月々に199ドル(約2万円)となっている。エンジンを積んだ500モデルを手に入れるのと変わらない金額で済んでしまうのだ。フィアットは、リースという方法でエンジン車とEVのコスト差をなくしている。

現在、米で一番売れているEVは日産「リーフ」。価格は2万8800ドル(約296万円)だが、リースなら3年契約で、契約時に1999ドル(約21万円)、月々199ドル(約2万円)となっている。500eよりも10万円ほど高くつくが、ちゃんとしたリヤシートと広めのカーゴスペースが備わっている分の差ということだろう。




価格が2万9125ドル(約299万円)の三菱「i-MiEV」は、1カ月69ドル(約7000円)という破格な料金でリースしている時期があった。だが現在は、頭金が3445ドル(約35万円)で月221ドル(約2.3万円)という設定。i-MiEVの頭金だけで丸1年、500eに乗れる計算になる。ホンダ「フィットEV」は価格が3万7415ドル(約385万円)で、3年リースでは頭金と月額がそれぞれ389ドル(約4万円)となっている。少しサイズは大きくなるが、フォード「フォーカス エレクトリック」は価格が3万9200ドル(約403万円)で、3年リースなら、頭金929ドル(約9.5万円)で月々284ドル(約3万円)。また、ダイムラーの「スマート フォーツー エレクトリックドライブ」は1カ月599ドル(約6万円)という内容だ。 ※リース料金はすべてビバリーヒルズ周辺のもの。

EVをリースするとしたら、500eが一番安いことが分かった。さらに500eの場合は、自宅にチャージユニットを設置する費用をリース料に含めることができる。このチャージユニットはクライスラーのカスタム部門「Mopar」が手がけている。

フィアットは、500eを1台売るごとに、1万ドル(約103万円)の損失が出ると発表しているが、500eを手軽に手にできる価格設定にしている。しかし、EVは安ければいいというものでもない。EV選びはスタイル、航続距離、急速充電器へのアクセスが重要なポイントになる。

フィアットはDC(直流)急速充電に対応した充電システムをすでに開発している。しかし、肝心な充電ステーションの数がまだ少なく、普及が待たれている状態だ。500eでは当分の間、標準的なSAE J1772 コネクターを使用し、充電時間は6.6kWで4時間となっている。



米国環境保護局(EPA)が認定した500eのガソリン等価換算燃費は、市街地122MPGe(51.9km/ℓ)、高速108MPGe(45.9km/ℓ)、複合116MPGe(49.3 km/ℓ)。水冷・加温式の24kWhのリチウムイオンバッテリーを床下に配置しており、キャビンのスペースは損なわれていない。公式発表によると、500eは1回の充電で140km走行できるという。

今回の試乗では、混雑したロサンゼルスと曲がりくねったマリブの丘を半日ほどかけて走った。トータルでは77.9km走行し、電力は48%しか消費しなかったので、実際の航続距離は160kmくらいありそうだ。これはエアコンを使用した状態で、アクセルペダルを激しく踏み込んだりしない、ごく普通の運転をした結果だ。残念なことに、試乗時のガソリン等価換算燃費は確かめられなかった。その原因はクルマに搭載されているコンピューターのソフトのバグ。フィアットはOSを調整中だったようだが、発売までには解消することを約束してくれた。

ちなみにEPAが認定した他社小型EVのガソリン等価換算燃費は以下のとおりだ。(複合/市街地/高速)

2013年型 スマート フォーツー エレクトリックドライブ:
107/122/93 MPGe(45.5/51.9/39.5 km/ℓ) 航続距離109km

2013年型 フォード フォーカス エレクトリック:
105/110/99 MPGe(44.6/46.8/42.1 km/ℓ) 航続距離122km

2013年型 ホンダ フィットEV:
118/132/105 MPGe(50.2/56.1/44.6 km/ℓ) 航続距離132km

2013年型 三菱 i-MiEV:
112/126/99 MPGe(47.6/53.6/42.1 km/ℓ) 航続距離100km

2013年型 日産 リーフ:
116/130/102 MPGe(49.3/55.3/43.4 km/ℓ) 航続距離121km




いろいろと数字を並べてきたが、クルマ選びは結局、ルックスとドライブフィールで決まるのではないだろうか。ありがたいことに500eは走りも良く、パワー不足で感触の良くないマニュアル・ギアボックスを持つ通常のガソリン・エンジン仕様の500よりも我々は気に入った。この後「アバルト 500C」にも乗ったのだが、エキゾースト・ノートが好きで堪らないという人でもない限り、500eの方が洗練されていて好ましいと感じるはずだ。500シリーズは車高が高く、車幅の狭いスタイルをしている。だが重いバッテリーを床下に搭載している500eは他の500よりも安定感があった。アバルトの足回りは決して弱いわけではないが、500eはそれよりさらにしっかりしているように感じられた。安定感が生まれた理由として、新たに作り直されたボディ・フロアの曲げ剛性が10%向上していることや、サスペンションに専用のチューニングを施していることなども挙げられる。その結果、電気仕掛けのフィアットは、レースで伝統を築いてきたアバルト・マジックに張り合えるほどの走りを身に付けた。前後重量配分も通常モデルの500が64:36であるのに対し、57:43とバランスがよくなっているせいもあるだろう。

最高出力83kW(111hp)の電気モーターは十分パワフルで、60km/hまでの加速感は、エンジン搭載モデルよりもよかった。EVだけに多段変速ではなく、ボタン式のセレクターを採用した1速ミッションなのだが、かなりいい走りをしてくれる。ただ、50km/h前後から高速道路で合流するために加速する場面では若干精細を欠く印象を受けた。0-60mph加速は9秒強で、標準モデルの500と変わらない。

アバルトのエンジン音は確かに魅力的だが、500eの静かさも魅力と言える。化石燃料を使うか使わないかの違いだ。最高速はアバルトが209km/hであるのに対し、500eは137km/h。130km/h以上のスピードが出せるクルマなら、それほど不都合な面を感じることはないだろう。



500eに乗って街を走り始めると、じきにEVを運転していることを忘れてしまう。回生ブレーキの違和感が他のEVに比べ、抑えられていたように感じたからだ。しかし、もっと別の理由があった。500eはトルクコンバータを持つAT車のようにクリーピングするのだ。アクセルから足を離すと、ゆっくりと動く機能をわざわざ設けており、上り坂でブレーキから足を離しても後ろに下がったりしない。我々が慣れ親しんできた動きをしてくれる。

高速道路で80mph(約130km/h)まで速度を上げても500eは静かでスムーズ、無理にスピード出していると感じることはなかった。しかし、ディスプレーの航続可能距離がどんどん減っていくので落ち着かない。ダッシュボードのディスプレイには矢印が表示され、今の状態で走り続けていると航続距離が伸びるか、それとも減少するかを教えてくれる。高速道路で9.6kmの距離を走ったら、推定航続可能距離が32kmほど減少してしまった。しかしその後、街中で低速走行したら、失った分をほとんど取り戻すことができた。

EPAが見積もった年間にかかる電気代500ドル(約5万円)と月々199ドル(約2万円)のリース代で500eが手に入るかと思うと、非常にそそられる。500eの販売は、少なくとも最初の1年間はカリフォルニア州限定とされているが、フィアットはヨーロッパやアジア、その他北米地域に販売エリアを拡大したいと考えているようだ。




500eはこれまでに登場したEVの中で最も魅力的なモデルと言える。15インチホイールを採用したほか、フロントマスクに手を加えてエアフローを最適化。Cd値を0.311まで落としたことで、他の500モデルより13%エアロダイナミクスの効率が良くなっている。

EV専用の明るいオレンジのボディカラーが用意されているが、Nero(ネロ)と呼ばれるダークグレーのカラーもあり、我々はこれが一番カッコいいと思う。フロント下部には、1960年代のイタリア家具やプリントデザインからインスピレーションを得たというドットパターンが採用されている。

インテリアは2種類が用意されている。ビアンコ(ホワイト)とネロ(ダークグレー)だ。ドットパターンが施されているレザーシートは、街中を乗り回したり渋滞に捕まったりする中でも十分に快適だった。そもそも500は長旅をするためのクルマという位置づけにないことから、筆者は今回の試乗では後部座席の快適性などより、もっと優先される項目に焦点を当てることにした。つまり、運転を楽しむことだ。




エンジン搭載車の他のモデルと同じく500eにはTomTomのナビシステムがついているのだが、安っぽい上に、視界の妨げになる場所に設置されているので、がっかりした。ナビには充電ステーションマップを表示する機能や、スマートフォンからルート情報を受け取る便利な機能が付いている。しかしやはり邪魔なので、必要がないときは取り外してグローブボックスにしまっておくことになるだろう。

インパネにあるディスプレーには速度やバッテリー残量のほか、ドライビングの状態が「パワー」、「エコ」、「チャージ」のいずれかで表示される。500eはボタン1つでドライビングモードを選択できるタイプの車ではないので、単にドライビング中の情報を表示するだけだが...。

ダッシュボード中央にはオーディオシステムが設置されている。衛星ラジオが聴けるほか、USB接続が可能になっている。ただ、液晶の表示画面にまでドット・モチーフを用いたようで、ずいぶん懐かしい感じがする。500eほどのハイテクなEVがタッチスクリーン式のインフォテインメントシステムを採用しなかったのは少々不思議だ。



不思議な点はまだある。運転席から車のサイドを確認するとき、ものすごく視界が悪いのだ。初めて車線変更しようとしたときは、少々パニックに陥った。隣の車線を確認しようとしたら、幅の広いBピラーが立ちはだかっていたからだ。500eはAピラーの幅も広い。ホンダのフィットに乗った経験のある方には分かっていただけると思うが、小型車の視界を良くするのにそれほど苦労はないはずだ。また、運転席側のサイドミラーを見る際に死角ができるのも残念だった。とはいえ、これは運転しているうちに慣れてしまった。

500と比べると500eは洗練された上に低速でのパワーが向上している。だが長距離運転など、EV版にはできないことがあるのも確かだ。今回の試乗で分かったことは、500eは混雑した道路を走るのに最適で、エンジン搭載モデルと同じくらいの経費で済む祝福すべきクルマだということだ。

【基本情報】
エンジン:83kW 電気モーター
パワー:最高出力111hp/最大トルク20.3kgm
トランスミッション:1速
0-60mph:9秒強
最高速度:85mph(約137km/h)
駆動方式:前輪駆動
車体重量:1,351kg
座席数:2+2
荷室容量:198ℓ
燃費:複合116MPGe(約49.3km/ℓ)
メーカー希望小売価格:32,500ドル(約334万円)

By Sebastian Blanco
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

Related Gallery:2013 Fiat 500e First Drive Photos


【PR】500eの購入を考える前に!まずは現在お乗りのクルマの査定価格を調べてみよう!

<関連フォトギャラリー>
Related Gallery:2013 Fiat 500e LA 2012 Photos

Related Gallery:Fiat 500 Magneti Marelli: SEMA 2012 Photos

Related Gallery:2012 Fiat 500 Abarth Review Photos

Related Gallery:2012 Fiat 500 Abarth Photos

Related Gallery:2012 Fiat 500 Abarth (US model) Photos


<人気フォトギャラリー>
Related Gallery:tokyo autosalon 2013 girls 05 01

Related Gallery:tokyo autosalon 2013 girls 05 02

Related Gallery:tokyo autosalon 2013 girls 05 03

Related Gallery:tokyo autosalon 2013 girls 06 01

Related Gallery:tokyo autosalon 2013 girls 06 02