【試乗記】「サスがない。デコボコ道は...」 超低燃費車VW「XL1」(ビデオ付)
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筆者は、先日のジュネーブモーターショーでたくさんの新型車を取材したが、その一つに超低燃費のプラグイン・ディーゼル・ハイブリット車、フォルクスワーゲン「XL1」の独占試乗があった。世界中で話題となっているモデルだけに、この試乗はとても興味深いものになった。

冒頭からこう言ってしまうのはどうかと思うが、アメリカでは「1リッター車(燃費がリッター100kmのエコカー)」が受け入れられる可能性は極めて少ない。少なくともこのXL1では難しいだろう。典型的なアメリカの公道をピックアップ・トラックやSUV車に囲まれながら走るXL1の姿は想像できない。1999年に2週間ほど、当時革命的と言われたホンダのハイブリッド車「インサイト」をアメリカで走らせたことがあったが、リッター当たりの燃費が約26kmという地球に優しい車であることは誇りに思えたものの、ボディがとても小さく、心もとなく感じたことを思い出した。今回フォルクスワーゲン(VW)は、インサイトよりさらに小さく、重量はほぼ変わりないXL1を作り上げたが、インサイトよりもずっと複雑なドライブトレインと安全性を備えていた。

実際、XL1の走りはインサイトと非常に近いものがある。だが、メカニズムについて知ればしるほど、XL1は超高効率を追求した独自の車であることが分かってきた。XL1は5.5kWhのリチウムイオン・バッテリーを電源とする最高出力27hpのモーターと、47hpの2気筒800cc直噴ディーゼル・ターボ・エンジンの組み合わせで走る。モーターやエンジン類がリアに配置されているのに対し、12Vの補器類用バッテリーと外部電源プラグや減速時の回生エネルギーで充電可能なリチウムイオン・バッテリーはフロントに搭載されている。


XL1がエネルギーを効率よく使うために、大きな役割を果たしているのが7速デュアルクラッチ(DSG)のトランスミッションだ。DSGを採用したことで、VW車らしさも加わっている。なぜかステアリング・ホイールにシフト・パドルはなく、センターコンソールのシフトレバーによってのみ操作する。Dモードは通常のオートマティックで、ブレーキを踏んだ時やアクセルを閉じて慣性走行中に減速エネルギーを回収するが、Sモードではシフトを遅らせ回生負荷を強くすることでより多くのエネルギーを回収できる。

燃料タンクはわずか10リットル。できるだけ節約して内燃機関を使わず、かつ最後の1滴まで燃料を使い切ると、次に10ドル(約950円)かそこら給油する前に約1111kmを走れることになる。また、バッテリーがフルに充電されていれば、100km/h以内のスピードならモーター単独で50kmの走行が可能だ。つまり、給油と充電をフルにしておけば、理論上は1160キロ以上も航行可能ということになる。そんなすごい数字が頭の中でぐるぐると回る中、スタートボタンを押して、レマン湖の北岸沿いに車を走らせた。

公道を走り、小さなスイスの町をいくつも通り抜けると、新製品をすぐ手に入れたがる人の気持ちがわかってきた。ただ、XL1のオーナーになりたいのなら、科学をめいっぱい楽しむ心を持っていないとだめだ。日常で使えるセカンド・カーが欲しいのなら、この車は候補からはずした方がいい。確かに試乗している間は楽しいが、その目新しさもいずれは薄れる。結局、普通の車に囲まれてガレージの中でほこりをかぶることになるではないかと、思わずにはいられないのだ。

フォルクスワーゲンの優秀な技術者たちはいろいろ言うだろうが、少し大げさに言わせてもらえば、XL1にはサスペンションがない。もし試乗場所が、道路の表面がきれいに整ったスイスの田舎道でなければ、ちょっと走るだけで脳天まで突き抜けるような衝撃を受けただろう。町に設置されていた大きなスピードバンプでは、ノーズを引き上げる油圧式昇降システムが付いていないフェラーリ「FXX」を運転しているかのように、ゆっくりと走らなくてはならなかった。思い切ってスピードを落とさずに一つだけ走り抜けてみたが、これは実に浅はかな考えだった。アメリカのデコボコ道を走るのなら、車を降りたらすぐにマッサージ師を呼ぶ必要があるだろう。ダンパーの可動距離は、最大で数センチといったところだ。専門家の説明によると、これはわずか0.189というXL1のCd値(空気抵抗値)を最適に保つためだという。この値は、1990年代後半に量産車で最も優れた記録を打ち立てたGM「EV1」よりも1000分の1ほど勝っている。

シートはとても座り心地がいい。写真を見ると、運転席と助手席が少しずれていることにお気づきになるだろう。助手席が数センチ下がり、ドライバーのちょっと後ろに座るようなスタイルは、マクラーレン「F1」の3シート配置を彷彿させる。シートの低さと視界の狭さは、1970年代のルノー・アルピーヌ「A110」並みだ。だが、現代の一般的な車との類似点を探してもあまり意味がない。XL1のシートの配置は、空気抵抗を抑えるのに最適なティアドロップ/シガー型の車体形状を保つ一方、ドライバーと助手席に座る人のスペースを同等に確保している。キャビン全体の雰囲気は見事なまでに簡素だが、そのほとんどがドライバーには馴染みのあるVWのインテリアだ。大きく目立つのは、複合素材を使用した小径ステアリングホイールで、まるでプロ仕様のカートから引っ張り出してきたかのようだ。ステアリングを握ると、オーダーメイドの手袋をはめているように手にぴったりとフィットする。リアのハッチの下には、地元産の無農薬野菜を入れるのにちょうどいい120リッターのトランクもある。

まるでアフターマーケットの製品を後付けしたように見えるガーミン社製(※1)のオンボード・ディスプレイは操作には少々コツがいるものの、使いこなすことは難しくない。ハイブリッド・システムの作動状況は、すべてここでチェックできる。この機能は「Think Blue.(訳者注:"環境のことを考えよ" という意味か)トレーナー」と呼ばれ、ドライバーに最も効率の良い運転を指導する。特徴的だったのは、サイドの様子をカメラでとらえる「Eミラー」で、ドアパネルにある小さなモニターにその映像が映し出される。これをチェックしながら走るのはさぞかし難しいと思いきや、それほどでもなかった。すれ違う車が接近するとゆがんでしまうが、これは非球面体のミラーを、ヨーロッパのサイドミラーの基準に適合させるためだ。それ以外は外の様子がほぼ正確に映し出された。真後ろは死角になるが、後方の様子はオンボード・スクリーンで確認できるので、さほど問題はないだろう。

XL1は、まずは250台がテスト生産され、ドイツとオーストリアだけで販売される。VWは、XL1の軽量さは維持しながらヨーロッパの衝突安全性テストをクリアするため、ボディの素材選びには力を入れた。主な解決策としては、ボディ・パネルとドアをすべてカーボンファイバー強化樹脂(CFRP)にしたこと。これに加え、マグネシウム製のシャーシや、アルミ製クラッシュチューブ、カーボン・セラミック製のブレーキ・ディスクなども採用。この超軽量構造のおかげで、XL1の車両重量はわずか795kgに抑えられたが、その分価格に跳ね返り、地元のディーラーで販売されるころには、アウディ「A6」に匹敵する値がつくかもしれない。それでもVWは赤字だと思ったほうがいいだろう。

同社の「ジェッタ・ハイブリッド」と同じ、マグネシウム製のギア・ハウジングに収められた7速DSGデュアルクラッチ・トランスミッションは、アクセルを踏み込んで800㏄のターボディーゼルに火が入ると、(ホンダ インサイトのCVTと違って)きちんとシフト・チェンジしている感触を伝えてくる。このブースト・モード(エンジンとモーターを両方使う)では、エンジンと電動モーターの出力は合わせて68hp(公式資料では51kW)、トルクは約14.2kgm(公式資料では140Nm)となり、推定12.5秒の0-60mph加速(公式資料では0-100km/h 12.7秒)にふさわしいパワーとなる。だが、ここまで軽量化にこだわったのなら、もう少しいい数字を期待してしまう。叶うなら0-60mph を11秒といったところだろう。このブースト・モードで高速を走った場合の航続距離は、少なくとも500km程度になるとVWは見積もっている。

アクセルをさらに強く踏むと、800㏄のディーゼルと小さなギャレット社製のターボ・チャージャーが作動する。シートとエンジン・ハウジングとの間にはごく薄いCFRP製の隔壁しかなく、遮音材はすべて軽量化のためにそぎ落とされたため、騒音が激しい。それは初期のフィスカー「カルマ」のセダンに搭載された4気筒「エコテック」エンジンを思い起こさせた。同時に、その音が不快だったことも思い出したが、実は今回もそうなのだ。VWは、ドイツ語圏に販売を開始する秋まで、いくらかキャビンに防音を施さなければならなくなるかもしれない。防音を施すか、あるいは時代の先を行き過ぎて結局、受け入れられなかった壮大なプロジェクトの一つに終わるのか、そのどちらかだ。

XL1の乗り降りはスムーズにできた。こうした実験的な車は、えてしてそれを運転することに夢中になって、時おり感じる不快さも我慢してしまうものだ。それでもXL1に関してはまったくそんなことはなかった。ガルウィング・ドアを閉めるときに、ほんの少し背伸びをしなければならなかったことぐらいか。その一方で、絶対に許しがたいのが、サスペンションのセットアップと、細くて硬いミシュランの低燃費タイヤ(サイズはフロントが115/80 R15、リアが145/55 R16)だ。XL1の初期購入者になるのは、ある種の"奉仕活動"のようなものだと言っておこう。この扱いにくく、環境にやさしい車の価格は、リース、購入ともに夏ごろ発表される予定だ。

XL1で研究された技術の多くは、将来的にはプラグイン・モデルの「e-Up!」の他、開発中の「e-ゴルフ」に応用されていく予定だ。とは言え、こうした大量生産の車のボディに桁違いなコストがかかるCFRPは使うことはできないし、ガルウィング・ドアにはならないだろう。だが、エコを意識した製品作りが急速に進められていることを全世界に示すことはできる。VWは、トヨタルノー日産GMといったメーカーがすでに確立した低燃費車というトレンドにただ追随するのではなく、低燃費というレベルを一気に引き上げようとしているのだ。

【基本情報】
エンジン: 800cc 2気筒TDI
パワー:68hp / 14.2kgm
トランスミッション:7速DSG
0-60mph:12.5秒(推定)(公式資料では0-100km/h:12.7秒)
ドライブトレイン:後輪駆動
車両重量:795キロ
座席数:2
荷室容量:120リッター
燃費:リッター約111キロ(最大推定値)
標準価格:未定

By Matt Davis
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

<日本編集部注記>
※1 ガーミン社製 ヨーロッパ車では幅広い車のタッチパネルに使われているメーカー

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【補足】 rakugakidou.net
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