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蒸気自動車の誕生、ガソリン内燃エンジンの発明、そして大量生産化の実現。こうした自動車の発展に貢献してきた先駆車たちに、今新たな1台が加わろうとしている。テスラのEVサルーン「モデルS」だ。2009年3月にプロトタイプが初公開され、「本格的な電気自動車(EV)」として多大な期待が寄せられてきたモデルS。今回ようやくその実力を試す機会が与えられた。短時間の試乗ながらも、紛れもなく世界初の実用的で妥協のない電気自動車である、と感じさせるモデルSの素晴らしさを早速お届けしたい。

今年6月、「モデルS」は満を持してテスラの米国フリーモント工場からラインオフした。たった10台のみの出荷だったが、最初の10台をオーダーした名だたる顧客を前にテスラのイーロン・マスクCEOも登場して盛大な納車式が開催されたことは記憶に新しい。

そして今回、我々はなんとその納車式で一番初めに顧客の手に渡った記念すべき車体番号S00001に試乗させてもらうことができた。最上級グレードのシグネチャー・パフォーマンスモデルだ。




シグネチャー・パフォーマンスモデルは、スタンダードモデルが最高出力367ps(内燃エンジンのパワーに換算すると)を発揮する電気モーターと40kWhのリチウムイオンバッテリー(約260km走行可能)を搭載しているのに対し、最高出力422ps、最大トルク61.2kgmを生み出す銅製ローターの3相交流誘導モーターを使用。さらに85kWhのマイクロプロセッサー制御リチウムイオンバッテリーにより航続距離を約480kmまで伸ばしている。これは現在市販されている電気自動車がフル充電した状態で走れる距離としては最長だという。

ちなみに車両価格は約790万円で、カーボンファイバーのアクセントが効いたナッパレザーインテリア、アクティブ・エアサスペンション、21インチアルミホイールは標準装備。グレー仕上げのハンドルを含め、ブラックでまとめられた内装も追加費用は掛からない。ただし、パノラミックサンルーフ(約12万円)、塗装保護フィルム(約8万円)、リアフェイシングシート(約12万円)、テスラ専用の急速充電器ハイパワーウォールコネクター(約10万円)はオプションだ。尚、2座のリアフェイシングシート(オプション。子ども用)を利用すれば、3列シートの7人乗りとして使える。

ファミリーセダンとしても使えるこのサイズこそ、テスラのフラグシップ「モデルS」が高評価を得ている要因の1つだ。写真では存在感を十分に発揮できていないかもしれないが、BMW のSUV「X5」と比較しても、モデルSは全長で約13cm、全幅で2.5cm大きい。さらに、スタイリングも実に洗練されており、キャラクターラインはどこかジャガーっぽくも感じられるが、それを上回る出来だ。しかも単に外観の美しさを追求したのではなく、CD値(空気抵抗係数)=0.24とエアロダイナミクスも計算されたスポーティなデザインとなっている。





いよいよ乗り込もうとドアパネルに埋め込まれたドアノブにそっと触れると、まるで目を覚ましたかのようにシルバーのドアノブがすーっとせり出してきた。印象的かつ近未来的な仕掛けはいかにも次世代のクルマらしい。そしてドアハンドルを少し引いて乗り込むと、まずその室内空間の広さに驚いた。

トヨタ「RAV4 EV」ホンダ「フィットEV」、テスラのロードスター(ロータス・エリーゼのプラットフォームをベースに開発)と違い、モデルSは既存のクルマのプラットフォームを流用するのではなく、専用開発したプラットフォームを用いている。それゆえ、約10センチという厚みを抑えたバッテリーパックをシャシーの下に敷き詰めることで、これまでのEVのように居住空間や荷室を犠牲にすることなく、バッテリー用スペースの確保を実現したのだ。

インテリア自体は、とにかくシンプル(人によっては質素に感じられるかもしれない)。3本スポークのマルチファンクションステアリングホイールの向こうにあるフラットなインパネも個性的だが、最大の特徴はやはりセンターに配置された驚くほど美しい17インチの液晶タッチスクリーンパネルだろう。アルミニウムで縁取られた特大の長方形のパネルをタップすればエアコン、インフォテイメント、ナビ、シート調節、シートヒーター、デフロスター、ムーンルーフ、ドアロック、トランクやフロントトランクの開閉などの操作を行うことができる。結果、従来の車のような機械的なスイッチ類がほとんど排除されたため、よりすっきりとした印象になったのだ。タッチスクリーンでの操作は最初こそ戸惑いを感じたものの、実際に使用してみると実に直観的で使いやすい。もう分かりにくい取扱い説明書も要らなくなるはずだ。




すべての操作をタッチパネルで行うことにより、ハザードスイッチと、パネルの両サイドにあるグローブボックスのオープンボタンを除き、室内に残された機能部品はウィンドウ・スイッチ、ステアリングホイールコラムそしてコラムシフトレバーのみ。しかし、それらもすべてパートナーであるメルセデス・ベンツのものがそのまま使われているため高品質で、インテリアの質感を高めている。

運転席に滑り込むと、イグニッションキーを回していないのに、自動的に始動する。と言っても、そもそもイグニッションキーはないため、ドライバーがキーを回したりスタートボタンを押したりすることもない。スマートキーを持って乗り込めば、運転席に人が座ったことをセンサーが自動的に感知し、前述のマルチパネルが起動する。最初は少し落ち着かないが(乗り降りを繰り返す時は正直面倒くさいと感じることもあった)が、次第に慣れてくるだろう。

発進時は慎重にアクセルを踏むことをおススメする。モデルSはギアチェンジの際に電動パワーブレーキ(リア・ブレーキに通常のブレーキキャリパーとは別に電動パーキングブレーキ専用のキャリパーも装備)が稼働するため、他の車と違ってクリープがない。しかも、スロットルのチューニングがとても繊細でレスポンスが良いので、うっかりアクセルを踏み過ぎると、びっくりするようなスピードで発進してしまう。ただこれも乗っているうちにすぐに慣れるだろう。実際、我々も試乗を終えるころにはスムーズ操作できるようになっていた。一方で気になったのが、後方視界の悪さだ。高解像度のリアビューカメラは付いているが、駐車時の視覚をカバーするために、リアエンドの両サイドに取り付けられるオプションのアラーム式パーキングセンサーを購入した方が良いだろう。尚、クリープは近いうちに行われる予定のソフトウェアのアップデートで導入されると見込みだ。




読者の中にはテスラ「モデルS」は、同社のロードスターをただ大きし、4ドアにしただけの車と思っている人もいるかもしれない。しかし、それは大間違いだ。モデルSの走りは洗練された欧州のスポーツセダン並みといえる。

その速さは他のEVやハイブリッドはもちろん、ガソリン車にも引けを取らない。米の車情報サイト「モーター・トレンド」によるシグネチャー・パフォーマンスモデルでのテストでは0-100km/hで3.9秒を記録している。しかもテスラいわく、最高速度は時速210kmに迫るという。ただ、ロードスターはわずかながらもモーター音を発していたが、モデルSは不気味なほど静かなため、加速感は風景が動くスピードで味わうしかない。

さらにモデルSには、アルミニウムが多用されている。ボディパネルにはもちろん、シャシーにも軽量アルミパネル、アルミ鋳造、アルミ押し出し材など、いたるところにアルミが使われている。これらはどうしても重くなりがちな電気自動車の車重を極力抑えるべく採用されたものだ。(それでもなお、車重2,108kgもあるのだが。)しかも、先にも述べたとおり重量級のバッテリーをシャシー下に配置し、低重心化しているため、スポーティなフィーリングを生んでいる。



アクティブ・エアサスペンションは、可変車高制御システムにより、速度に応じて自動で最適な車高に調整してくれる。リアルな操舵感が得られないとしてEVの欠点(ガソリン車の電動パワステも評判は決してよくないが)ともいわれる電動パワーステアリングについては、操舵力の程度をタッチスクリーンパネルで変更が可能だ。(もちろんスポーツ仕様がオススメだ。)

また、モーター部がリアのオーバーハングに配置されているおかげで、モデルSは前48:後52というドライビングに最適な重量配分となっている。足回りはラージセダンのように重厚感があり、横揺れも少なく、今回は峠を走る機会はなかったものの、どんな道でもどんな速度でも非常に安定していて快適に感じられた。

後方にモーターを置くことは他にも利点がある。静粛性だ。運転席から離れているため、いくら飛ばしても騒音が一切ない。その上、流麗なボディが空気抵抗を軽減しており、室内は車の中とは思えないほどのゆとりとくつろぎの空間となっている。


EVは、減速や停止時に発生するエネルギーを利用した回生ブレーキを採用している。その挙動の不自然さは、EVを運転したことがある人なら誰でも経験したことがあるだろう。これはシステムが出来るだけ多くのエネルギーを取り入れようとして、ブレーキを効きすぎるように設定していることが原因だ。テスラのエンジニアたちは、スポーツカーのフィーリングが損なわれないよう、ドライバーの立場に立って慎重に回生量を調整した。その結果、EVを運転していることをしばしば忘れてしまうほど自然なブレーキフィーリングになっている。

回生エネルギーシステムを最大限生かすためにはブレーキの小型化が必要だが、小型化によってブレーキ性能が劣ってしまう可能性もある。しかし、こういった面でもテスラに妥協はない。高性能スポーツカー並みの設計を目指し、前後輪ともにベンチレーテッドディスクブレーキと、フロントは6ピストン、リアは4ピストンのモノブロックキャリパーを採用している。

デザインやシャシー、ドライビングダイナミクスはさておき、モデルSが世界を変えるクルマである本当のゆえんは85 kWhのリチウムイオン電池だろう。約480kmというガソリン車のような航続可能距離は、EVに対する不安を完全に払しょくしている。しかも他のEVと異なり、バッテリーの容量が大きいため、急速に電力が減ることがないため、安心して走行することができる。

正直なところ、我々は試乗するまでモデルSを信用していなかった。ここ数年、先進的なパワートレインを搭載したクルマに数多く試乗してきたが、大抵は残念に結果に終わっていた。しかし、モデルSは違う。本当に画期的なクルマだと自信を持ってお伝えしたい。新技術ゆえに譲歩や代償、妥協に悩まされたこれまでのEVなど比ぶべくもない、印象的で魅力的なスポーツセダンである。

テスラ「モデルS」は自動車史に残る革新的な1台となるだろう。何はともあれ、まずは試乗してみてほしい。

【基本情報】
エンジン:310kW電動モーター
パワー:421ps / 61.2kgm
トランスミッション:1速
0-100km/h:3.9秒
最高速度:210km/h
駆動方式:後輪駆動
車両重量: 2108kg
座席数:2+3+2
燃費:37.8km/ℓ(EPA米環境保護庁データ)
メーカー希望小売価格:790万円(税込)から

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By Michael Harley
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

【捕捉】 rakugakidou.net
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