今もなお魅力を放つ
日本車が飛躍的な進歩を遂げた1960年代。技術や生産規模で先行するヨーロッパ車とアメリカ車から多くの物を学びつつ、日本オリジナルの独創的なアイディアと美意識を注ぎ込んだ数多くの名車たちが生まれ、それは今でも私たちを魅了する。今回はこれまでにAutoblogでご紹介した、そんな歴史的日本車の中から、読者の皆さんに多くの反響を得た5つの名車を振り返ってみたい。なお、それぞれ発売された年の大卒初任給と新車販売価格も書き記しておいたので、これらのクルマが当時どれほどの存在であったのか、ご想像いただければと思う。


第5位 ホンダ S800



1965年にF1で初勝利を挙げたホンダが、翌年発売した高性能小型スポーツカー。1963年に「S500」として市販された "ホンダ・スポーツ" の最終発展型である。「時計のように精密に回る」と言われた直列4気筒DOHCエンジンは、排気量791ccから最高出力70psを8,000回転で発生。最高速度は160km/hに達したという。当時の新車価格は65万3,000円。この年の大卒初任給は2万4,900円だった。ということは現在の貨幣価値に換算すれば約550万円というところ。モータースポーツを志す当時の若者にとって、頑張れば何とか手が届く存在だったのだろう。ちなみにこの頃、ポルシェ 911は435万円もしたそうだ。
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第4位 トヨタ スポーツ800



1965年に発売されたトヨタの小型スポーツカー。通称「ヨタハチ」とか「トヨッパチ」などと(愛情を込めて)呼ばれる。フロントに搭載されているエンジンは大衆車「パブリカ」用をチューンした水平対向2気筒OHV。排気量790ccから最高出力45psと最大トルク6.8kgmを発生する。ホンダのDOHC4気筒に比べるといかにも非力だが、空力性能に優れたボディとモノコック構造による軽量な車体を武器に、サーキットでは対等に戦った。もっとも当時を知る人に聞いたところによれば、誰が買ってもそれなりに速いホンダ S800に対し、トヨタ スポーツ800はワークスカーだけが異常に速かったという話も。新車当時の価格は60万円。1965年の大卒初任給は2万3,000円だから、現代で言えばやっぱり550万円くらい。価格の面でもホンダとは "ガチンコ" のライバルだった。

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第3位 マツダ コスモスポーツ



世界で初めて本格的にロータリー・エンジンを量産・実用化したマツダが、1967年に発売したスポーツ・クーペ。2ローター式10A型ユニットは最高出力110psと最大トルク13.3kgmを発揮し、最高速度185km/hを記録した。特撮テレビ番組『帰ってきたウルトラマン』に登場する特装車両「マット・ビハイクル」のベース車としても(一部の世代には)有名。ロータリー・エンジン搭載車ならではの低いボンネットと美しいデザインは、後の「RX-7」や「RX-8」にもしっかり受け継がれた、と言えるだろう。発売当時の価格は148万円。1967年の大卒初任給は2万9,100円だったから、現代の貨幣価値に換算すると1,000万円を超える。庶民には美しく咲く高嶺の花に見えただろう。

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第2位 日産 スカイライン 2000GT-R



通称「箱スカ」と呼ばれる3代目「スカイライン」に、レーシングカー「R380」のエンジンをデチューンして搭載したという超高性能サルーン。今に続くスーパー日本車「GT-R」の名前を冠する最初のモデルだ。レースでも大活躍し、49連勝を含む通算52勝という記録を打ち立てたことによって、「伝説」とか「神話」という言葉を今に至るまで纏い続けている。S20型と呼ばれる2.0リッター直列6気筒は160psの最高出力と17.6kgmの最大トルクを発揮。ワークス・チームのレース仕様車では250psを超えていたという。1970年に発売された2ドア・ハードトップの販売価格は154万円。モータースポーツ向けモデルということで、高価格車にも関わらず、ヒーターやラジオや時計さえもオプションだったそうだ。その年の大卒初任給は3万7,400円だから、現在の貨幣価値に直すと850万円以上といったところか。現行型「日産 GT-R」と同じくらいということになる。

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第1位 トヨタ 2000GT



1位はやっぱり、これまで何度もご紹介してきたこのクルマ。トヨタとヤマハの共同開発によって生まれた我が国初の本格グランツーリスモだ。美しいロング・ノーズの下には、最高出力150psと最大トルク18.0kgmを発生する2.0リッター直列6気筒DOHCエンジンを搭載。FIA公認トラックである谷田部の高速試験場で高速耐久スピードトライアルに挑戦し、3つの世界記録と13のクラス別国際新記録を樹立した。1967年の発売時に付けられた価格は238万円。コスモスポーツのところでご紹介したようにこの年の大卒初任給は2万9,100円だったから、現代の貨幣価値に換算すれば1,600万円以上になる。とはいえ、この2000GTは生産台数が僅か300台あまりと極端に少ないため、いま手に入れようと思ったらそれ以上の資金が必要だろう。

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他にもご紹介したい名車はいくつもあるが、それはまた次の機会に。スペックの数字や快適性、環境性能などの面ではもちろん現代のクルマにとても敵わない。しかしこの時代に生まれたクルマならではの、何か我々を惹き付ける魅力があることも確か。それは単なるノスタルジーだけではないはず。なぜなら、これらのクルマが現役だった時代を知らない若い世代の人々に中にも、その魅力に取り憑かれてしまう人が決して少なくないからだ。

翻って現代。トヨタ 86が当時のトヨタ スポーツ800の半値で買え、少し頑張ればスバル WRX STIフェアレディZだって手に入る。GT-Rは国際級スーパー・スポーツに成長し、トヨタとヤマハはLFAを世に送り出した。
クルマ好きにとって、1960年代とどちらが幸せだろうか...?