【続報】BMW M社が作ったV型12気筒エンジン搭載の「Z3」について、さらに詳しい情報を発掘!
先日、BMW M社がコンパクトなロードスター「Z3」にV型12気筒エンジンを搭載したプロトタイプを製作していたことについてご紹介した。一体これは何なのか、どんなクルマなのか、気になった方も多いに違いない。実はその後色々と調べてみると、当時ドイツの自動車雑誌「アウトツァイトゥング」がこのプロトタイプ車をテストしていたことが分かった。今回はその記事を元に、もう少しこの「BMW Z3 M V12」に迫ってみよう。

まず、このプロトタイプ車が製作されたのは、どうやら1999年のことらしい。当初は1.9リッター直列4気筒エンジンを搭載して発売されたZ3に、BMW3シリーズの高性能モデル「M3」用に開発された3.2リッター直列6気筒を積んだ「M ロードスター」が発売されたのが1998年のことだから、それより後ということになる。つまりBMW M社は、Z3をベースに高性能な "Mモデル" を開発しようとしていた段階で、12気筒エンジンの可能性も試してみた、ということではない。あくまでも、M3用6気筒を搭載したM ロードスターが市販された後になって、V型12気筒を積むプロトタイプが製作されたのだ。

となると、ますます「何のため?」という疑問が湧く。その答えもアウトツァイトゥング誌の記事に書かれていた。

ベースとなった M ロードスター

321psを発生する直列6気筒エンジンを搭載したM ロードスターを世に送り出した後、BMWでドライブトレーン開発部門を統率していたゲルハルト・シュミット博士は、さらに他のエンジンをZ3に搭載することは出来ないか、また搭載するとどうなるか、その可能性を探るため、「M73」型と呼ばれる5.4リッターV型12気筒エンジンを搭載した実験用車両の製作を、BMWのモータースポーツ活動および高性能モデル開発部門であるBMW M社に依頼したのだという。BMW M社では3人のエンジニアが3ヶ月掛けてこれに取り組んだそうだ。彼らはベースとなったアークティック・ブルーのM ロードスターのフロント・ノーズに、V12エンジンを詰め込むだけでなく、ラジエターやオイル・ポンプ、オイル・パン、エキゾースト・マニフォールドもこれに合わせてモディファイを加え、さらにサスペンションにはバネレートがより固めのスプリングを組み込んだという。ギアボックスは「850ci」用の6速MTに換装。仕上げに、BMWの高性能モデルでは度々使われているオレンジ色にボディを塗り替えた。



アウトツァイトゥング誌がこのクルマをテストしたのは、1999年の8月。時折雨が落ちる生憎の天候で、テストコースの路面はウェットという状況だった。Z3に押し込まれたV12エンジンは、326psという最高出力こそM ロードスターの3.2リッター直列6気筒と僅か5psしか違わないが、発生回転数は2,400回転も低い上に、最大トルクは4割増し以上の49.9kgm。当時、ロールス・ロイスにも使われていたこの12気筒エンジンは、僅か1,000回転で40.8kgmものトルクを発生する。豊かな低速トルクが、市販モデルのM ロードスターとの最大の違いだ。濡れた路面では3速ギアでもホイール・スピンしたそうだ。M3用3.2リッター直6を積んだ段階で、すでにノーマルのZ3よりも強化されているはずのシャシーだが、スロットルを開ける度にテールが横を向くことを防げなかったという。足回りは固められているそうだが、タイヤのサイズはフロントが225/45 ZR17、リアが245/40 ZR17と、M ロードスターとまったく同じ。これでは流石に大トルクを支えきれなかったのだろう。また、エンジンのシリンダー数が倍に増えているにも拘わらず、車両重量は意外なことに1,400kgと、M ロードスターからほとんど増加していないそうだ。M3とM ロードスターに採用されていた「S50」型直列6気筒が、1気筒辺り4バルブのDOHCヘッドと鋳鉄製ブロックを持つことに対し、M73型V12気筒は1気筒辺り2バルブのSOHCヘッドで、シリンダー・ブロックはアルミニウム製。思ったほど重量差がないのかも知れない。

BMWから発表されたと思しき動力性能の測定データを見ると、0-100km/h加速は5.5秒と記されている。どうしてもホイールスピンによるロスが生じてしまうようで、3.2リッターのM ロードスターよりも0.1秒、遅いのだ。最高速度は、BMWの市販モデルと異なりリミッターがないため、263km/hに達するという。



FRロードスターのフロントに大排気量エンジンを搭載し、思いのままにそれを操るということは、ある種の(きっと「コブラ」の猛毒に冒された)クルマ好きにとって1つの夢に違いない。自らの技術と勇猛さを試し、危険と隣り合わせの達成感は大きな誇りと悦楽を与えてくれる。トラクション・コントロールなどの電子制御システムが高度に発達し、スーパーカーでさえCO2排出量を気にする現代、彼らはどんなクルマにそれを求めればいいのだろうか。

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