27日、2012年F1第6戦モナコGP決勝レースが開催された。昨夜の速報でお知らせした結果順位に加えて、レースのリポートをお届けしよう。

土曜日に行われた予選では、第3ラウンドになって突如メルセデスミハエル・シューマッハがトップ・タイムを記録。2010年にF1ドライバーとして復帰してから初の、そして自身69回目のポール・ポジション獲得‥‥と言いたいところだが、シューマッハは前戦スペインGPでブルーノ・セナに追突したことによりペナルティを言い渡されているので、5グリッド降格が決まっている。F1ポール・ポジション獲得回数世界記録の更新は、また次戦以降にということになった。



代わって最前列からスタートすることになったのが、予選で2番手のタイムを記録したレッドブルマーク・ウェバー、その横にシューマッハのチームメイトであるメルセデスのニコ・ロズベルグ。2列目にはマクラーレンから5年で1億5千万ドル(約120億円)という高額の契約をオファーされていると囁かれているルイス・ハミルトン。隣にロータス・ルノーのロマン・グロージャンが並ぶ。その後ろはフェラーリフェルナンド・アロンソと、6番手に降格されたシューマッハ。さらに4列目にフェラーリのフェリペ・マッサとロータス・ルノーのキミ・ライコネンというスターティング・グリッドだ。ザウバー小林可夢偉は12番グリッドから入賞を狙う。



そして27日、現地時間の午後2時に伝統の(F1世界選手権より遙かに長い歴史を持つ)モナコGP決勝レースがスタート。
真っ先に1コーナーに飛び込んだのは、ポール・ポジションからウェバー、続いてロズベルグ。ハミルトンはやや出遅れたようだ。

その後ろでは混乱が生じていた。スタートでもたついたグロージャンを右からアロンソが追い抜いていき、左にはシューマッハが並びかける。ここでまず、アロンソの左後輪とグロージャンの右前輪が軽く接触。グロージャンは思わず左に避けようとするが、そこにはすでにシューマッハが。2台は激しくぶつかり、跳ね上がったグロージャンのロータス・ルノーは横を向いてしまう。これに塞がれたのは後続、特に中位グリッドからスタートした選手達だ。コーナーをショートカットして避けようとするマシン達の中で、小林可夢偉はグロージャンのマシンに当てられサスペンションを壊してしまう。



この事故でセイフティ・カーが出動。2周ほど先導した後、3周目の終わりにコースを退き、4周目からレースが再開する。

この時の順位は、トップがウェバー、2番手にロズベルグ、3位がハミルトンと、ここまではスタート順通り。4位にアロンソ、5位にマッサが上がり、6位には予選で10番手だったレッドブルのセバスチャン・ベッテルが食い込んで来た。以下ライコネン、シューマッハと続く。

傷ついたマシンでペースの上がらない小林可夢偉は6周目を走り終えた後ピットに戻り、残念ながらそのままリタイヤ。あの事故では可夢偉の他にウイリアムズのパストール・マルドナドも巻き込まれ、すでにマシンを止めている。シューマッハのマシンには問題がなかったようだ。



実はこの日、30周目頃からサーキットに雨が降るという天気予報が出ていた。各マシンは、出来ればそれまで、スタート時に装着していたタイヤで走り切りたいという考えだ。その前にタイヤを履き替えても、路面が濡れてしまえば雨用タイヤにまた交換しなければならなくなるからだ。

こうなるといたずらにペースを上げるよりも、タイヤを温存させて雨が降るまで抑えた走行を続ける方が賢い。コース幅の狭いモンテカルロ市街地サーキットでは、後ろから自分よりペースの速いクルマが来ても、そうそう抜けるものではないから、そんな作戦が成り立つ。見ている側は退屈でたまらないが、ドライバーとチームは、これはこれで緊張感のある戦いを続けているのだ。

ほぼ全車が軟らかめの「スーパー・ソフト」タイヤを履いてスタートした中で、実は予選であまり冴えなかったベッテルは、硬めの「ソフト・タイヤ」を装着してレースに臨んでいたのだった。周回数が進んでいくと、タイヤの寿命がより長いベッテルが有利になる。後ろで7位を走行しているライコネンはタイヤが消耗して苦しげな様子。ベッテルに置いていかれ、後ろからシューマッハにせっつかれる。

20周を過ぎたあたりでそろそろタイヤを交換したいドライバーも出てきているはずだが、いま上位のドライバーがピットに入ると、コースに戻ったときに後続の集団の後ろに出てしまうことになる。そんな "トラフィック" に押さえられては、大きなタイムロスだ。一度後ろに廻ってしまうと、遅いクルマでもなかなか抜けないのが、このモナコである。



硬直状態のレースが動いたのは27周目。まず2番手走行中のロズベルグがピットへ向かい、タイヤ交換。コースに戻ったときには、ちょうどライコネンの前に出ることができた(ペースの遅いライコネンに引っ掛からずに済んだ)。そのライコネンには、過去にモナコで5勝を挙げたシューマッハが後ろから激しく仕掛けてくる。同様に、タイヤが消耗して辛そうなハミルトンには、アロンソが迫る。

29周目を走り終えたとき、トップのウェバーとその後ろのハミルトン、ライコネンらがピットへ。この間に、暫定的にトップに立ったアロンソが猛アタック。このときのために温存していたタイヤの、最後のグリップ力を最大限に使いタイムを削るような走りを見せる。ウェバーはロズベルグの前でコースに復帰。ピットインのタイミングで逆転しようとしていたロズベルグの目論見は上手く行かなかった。交換した硬めのソフト・タイヤがなかなか温まらず、思ったほどペースがすぐに上げられなかったからだ。30周目を走り終えてアロンソがタイヤ交換。ピットを出てコースに戻ったときには、ハミルトンの前に出ることに成功した。次の周にはマッサもピットへ。

これで順位は、トップが硬めのタイヤで引っ張っているベッテル、2位ウェバー、3位ロズベルグ、4位アロンソ、5位ハミルトン、6位にこちらもまだタイヤ交換をしていないシューマッハ、7位マッサと続く。



35周目になっても雨はまだ降らない。この周を走り終えたときに、シューマッハがピットイン。トップのベッテルは、ピットに入る前になるべく後続とのギャップを拡げておきたい。2位ウェバーとの差は15秒。他のチームからは、ベッテルを助けるためにウェバーがわざとペースを落として後続車を抑えているのではないか、という疑念の声も。

38周目、ついに雨がポツポツと降り出したという情報が入る。だがまだ路面は乾いたまま。雨用タイヤの出番は来ない。

スタート時に新品のソフト(という名前だけれど今回は硬い方にあたる)タイヤを履いていたベッテルは、40周以上もそのまま走り続けているにも拘わらず、後ろから来るウェバーやロズベルグよりも速いラップタイムで走り続ける。



46周を走り終えて、ベッテルがようやくピットへ。他の上位ドライバーたちとは逆に、2セット目で軟らかめのスーパー・ソフト・タイヤに履き替えると、ハミルトンの直前、4位でコースに復帰。作戦は大成功だ。

61周目、突如シューマッハのマシンにスピードが出なくなるというトラブルが発生。後続のクルマ達に次々と抜かれていく。シューマッハも抵抗はしない。彼のマシンは燃圧が低下したようだ。65周目にピットへ戻るとそのままガレージに入り、マシンを降りてしまった。

この頃になると、客席で傘が開き始め、67周目には車載カメラにも僅かに水滴が付くようになる。路面が濡れ始め、各車のラップタイムがそれまでの1分19秒台から24秒台にまでペース・ダウン。マシンが滑り始めているのが、画面を通しても分かる。



レース終盤で一波乱あるか、と思いきや、74周目頃には雨も止み、ラップタイムが戻ってきた。トップのウェバーからロズベルグ、アロンソ、ベッテル、ハミルトン、マッサまで6台が数珠つなぎ状態。狭いコースで周回遅れをパスしながらゴールを目指す。各車の間はかなり接近しているのだが、この狭いコースではオーバーテイクは仕掛けられず。見た目上ではバトルしているようにとても見えない。しかし、前後に車間がほとんどない状態で周回遅れをかわしながら、「ミスしたら負け」という闘いが続く。

そして78周のレースが終了。最初にチェッカーフラッグを受けたのはマーク・ウェバー。2010年以来、モナコ2勝目を挙げた。2位はニコ・ロズベルグ、3位にフェルナンド・アロンソという表彰台の顔ぶれだ。




最終的なレースの結果順位は以下の通り。

優勝 マーク・ウェバー(レッドブル・ルノー)
2位 ニコ・ロズベルグ(メルセデス)
3位 フェルナンド・アロンソ(フェラーリ
4位 セバスチャン・ベッテル(レッドブル・ルノー)
5位 ルイス・ハミルトン(マクラーレン・メルセデス)
6位 フェリペ・マッサ(フェラーリ)
7位 ポール・ディ・レスタ(フォースインディア・メルセデス)
8位 ニコ・ヒュルケンベルグ(フォースインディア・メルセデス)
9位 キミ・ライコネン(ロータス・ルノー)
10位 ブルーノ・セナ(ウイリアムズ・ルノー)
11位 セルジオ・ペレス(ザウバー・フェラーリ)
12位 ジャン・エリック・ベルニュ(トロロッソ・フェラーリ)
13位 ヘイキ・コバライネン(ケータハム・ルノー)
14位 ティモ・グロック(マルシャ・コスワース)
15位 ナレイン・カーティケヤン(HRT コスワース)
16位 ジェンソン・バトン(マクラーレン・メルセデス)

今年のF1は、6戦終わってなんと6人目の優勝者が誕生。すべてのレースで別のドライバーが勝つという、一種の "異常事態" になっている。シーズン終盤には誰と誰がチャンピオンを争うことになるのか、今の段階ではまったく分からないし、現時点でもフェラーリ、レッドブル、マクラーレン、メルセデス、ロータス・ルノーの中で、何処のチームが最も優勢かということすら簡単には指摘できない状況だ。1つ言えるのは、今日のレースが象徴していたように、特別に強いチームがあるというわけではなくミス(作戦面でもドライビングでもピットワークでも)をしたチームが負けるという、サドンデスのような状態が続いているということだ。

次戦カナダGPの決勝レースは6月10日、日本時間では月曜日の午前3時スタート。果たして7人目のウィナーは出るだろうか!?

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Image Credit: Paul Gilham, Clive Mason, Mark Thompson, Vladimir Rys, Peter J Fox/Getty | Luca Bruno, Christian Lutz, Antonio Calanni, Claude Paris, Dimitar Dilkoff/AP

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