エリック・クラプトンが特別注文した、世界に1台のフェラーリ「SP12 EC」が正式公開!
以前からその存在は確認されていたが、フェラーリが特別注文を受けて製作した世界に1台のモデルが24日、公式サイト上で正式に発表された。オーダーした人物は、著名なミュージシャンにして大のクルマ好きとして知られる、エリック・クラプトンその人である。

このワンオフ・モデルは、フェラーリの特別注文製作モデルであることを表す「SP(スペシャル・プロジェクト)」の文字と、クラプトンが愛して止まない12気筒フェラーリに対する敬意を示す「12」という数字に、エリック・クラプトンの頭文字「EC」を組み合わせ、「SP12 EC」と名付けられた。

ボディのデザインは、チェントロ・スティーレ・フェラーリ(フェラーリの社内デザイン・センター)と、ピニンファリーナのコラボレーションによって実現したものだとか。クラプトンからの注文は、自身が最も気に入って3台以上を乗り継いだという、水平対向12気筒エンジンを搭載した1970〜80年代のフラッグシップ・モデル「512 BB」からインスパイアを受けつつ、現行モデル「458 イタリア」のようにドライブできるクルマにしたいということだったそうだ。



ウエスト・ラインで赤/黒に塗り分けられたツー・トーンのカラーリングをはじめ、フロント・フードのセンターに開けられたエア・インテークとそれを覆うルーバー、シルバーのフロント格子グリル、ルーフ・エンドに装着されたスポイラー、丸型テール・ランプとその間をつなぐブラック・アウトされたテール・エンドなど、SP12 ECには各部に512 BBから引用されたモチーフが見られる。

その中身に関しては詳細が明らかにされてはいないのだが、どうやらパワートレインも含めて、458 イタリアがベースになっているらしい。フェラーリの社員がインターネット上のフォーラムで漏らしたという情報によれば、エンジンは噂されていたような12気筒ではなく、458 イタリアの4.5リッターV型8気筒がそのまま搭載されているそうで、570馬力の最高出力も市販モデルと変わりがないとか。



『いとしのレイラ』や『ワンダフル・トゥナイト』などのヒット曲で知られるエリック・クラプトンが初めてフェラーリを手に入れたのは、1969年頃のこと。ある日、友人のジョージ・ハリスン(ご存じ元ビートルズのメンバー)が、ハートウッドエッジにあったクラプトンの家に「365 GTC」に乗ってやって来た。フロントに4.4リッター(365cc×12)のV型12気筒を搭載し、小さな後部座席を備えた、フェラーリとしてはラグジュアリーなクーペである。

「ダークブルーのボディにタンの内装だった。私はそれまで、こんなに美しいものは見たことがなかった」とクラプトンは述懐している。「繊細で簡潔で優雅で、しかし大きなホイールが装着されていた。私はそれがすぐに気に入ったので、自分のために1台注文した」。

しかし、この時クラプトンは、マニュアル・トランスミッションのクルマを運転したことがなかったそうだ。365 GTCを届けに来たフェラーリ・ドライバーのマイク・サーモンが「このまま走りに行きますか?」と訊くので、「いや、今はやらなくちゃならないことがあるから」と嘘をつき、サーモンが帰った後、クラプトンは初めて購入したフェラーリでマニュアル車の運転を練習したという。この365 GTCは長い期間所有していたそうで、しばらくしてからフェラーリ純正色のメタリック・パープルに塗り替えたりもしたとのこと。



それから「デイトナ」「512 BB」「308」など後のモデルをいくつも所有したクラプトンは、6リッターV型12気筒を搭載する限定モデル「エンツォ」が発売されたときにはイタリア・マラネロにあるフェラーリ本社まで自分で受け取りに行ったという。

「最初は心配していたよ。だってエンツォはシューマッハが開発に関わったほとんどF1マシンみたいなクルマだし‥‥。でも実際に乗り込んでファクトリーから走り出したら、モーリス・マイナー(イギリスの大衆車)を運転するみたいにイージーだということが分かった。とても素晴らしかったよ。高速道路に出るまでは30MPH(約48km/h)で走って行って、そこからアクセルを踏み込んだら、"地獄のコウモリ" みたいにすっ飛んで行った。北フランスに着いたあたりで完全にマスターしたね。驚くほど楽に、非常に速く旅ができた」と、クラプトンは『フェラーリ・マガジン』に掲載されたニック・メイスン(プログレッシブ・ロック・バンド「ピンク・フロイド」のドラマー。エンスージァストとして有名)との対談で語っている(後述のエピソードもその対談を参照したもの)。



その後も「599 GTB フィオラノ」や「612 スカリエッティ」(彼自身にとっては、599より612の方が好みだったとか)など、全部で30台くらい(対談が行われた2008年の時点で)のフェラーリを所有したというクラプトンだが、特に「ボクサー・フェラーリ(水平対向 "ボクサー" 12気筒エンジンを搭載したモデル)」が大好きで、これまで乗ったフェラーリで最も楽しかったのは「512 BBi」だったそうだ。ただし、「クルマは、自分で運転したり面倒を見たり出来る範囲の台数しか一度に所有しないというポリシーがある」そうで、多くても同時には5台までしか持たないと決めているという。エンツォも2007年末に手放してしまったとのこと。

最新の公道用モデル以外にも、「250 GT SWB」のようなヒストリック・モデルも所有しているそうだが、"コンペティション・ヒストリー"(参戦したレースにおける輝かしい戦績)のあるクルマは、「いいなと思うけれど、そういうクルマに私が乗るのは相応しくない」と思うから手を出さないという。かつてギターの世界では "ゴッド" と呼ばれた彼も、レーシング・フェラーリの前ではそんな風に考えるのだ。

それほどフェラーリが好きなクラプトンにとって、今回のプロジェクトは「巨大な真っ白なキャンバスを前に、絵を描くようなもの」で、SP12 ECというクルマの誕生と開発に関わったことは「信じられない体験。こんな満足感を味わったのは初めて」だったと語っている。彼が支払った金額は、一説によると360万ユーロ(約3億6千万円)にもなるとか。



ちなみにご存じの方も多いと思うが、フェラーリが近年になって始めた(というより約50年ぶりに再開した)この「特別注文製作」の第1弾は、日本人エンスージァストの平松潤一郎氏が注文された「SP1」。当時の市販モデル「F430」をベースに、ピニンファリーナでもチェントロ・スティーレ・フェラーリでもなく、レオナルド・フィオラヴァンティ(元ピニンファリーナのチーフ・デザイナーで、1960年代後期のモデルから'87年の「F40」まで数々のフェラーリを担当した)にデザインを依頼したという、オーナーの嗜好と志向が強く反映されたワンオフ・モデルだった。



市販モデルや限定モデルを乗り継いで来た人が辿り着く「自分だけのフェラーリ」。夢のある話ではあるが、例えばこれまでフェラーリに乗ったことなどない人が、いきなり大金を積んで注文しようとしても、フェラーリはお断りするそうだ。なので、もし宝クジで6億円が当たったとしても、まずは最新モデルの「F12 ベルリネッタ」あたりからお付き合いを始めなければならず、フェラーリに認められるまでには、ヒストリックも含めて数台(あるいは数十台)のモデルを所有・維持できるだけの「成功」と「情熱」を兼ね備えた人物にならなければならない。一攫千金を当てたとしてもそこから先がまた大変‥‥そう考えると、逆に「夢のない」話に思えてしまうかも。

【Source: Ferrari

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