【試乗記】アウディのコンパクトSUV「Q3」は、「生活を変えたい人」にお勧め!
アウディが2011年の上海モーターショーで発表したコンパクトなSUV「Q3」。それから1年以上経った今年5月8日に、まずはハイパワーで装備充実の上級グレードが日本でも発売された。一見して "アクティブな人" 向けに見えるこのクルマ、試乗会に参加して感じたことは、むしろそれとはまったく逆の人たちにお勧めしたい、ということだった。

「Q」で始まる車名はアウディ・ラインアップのSUVである印。数字の「3」は、コンパクト・クラスであることを表している。つまり、フォルクスワーゲンの「ゴルフ」とプラットフォームを共有するハッチバック「A3」をベースに、SUVとして仕立てたモデルが「Q3」であり、「Q7」「Q5」と揃うアウディ製SUVモデルの末弟にあたる。

試乗会の場所に選ばれたのは、箱根。アウディが「都会派SUV」と謳うQ3なのになぜ箱根? と疑問に思ったのだが、それは乗ってみて分かった。つまりこれは、アウディの自信の表れである。



乗り込むとSUVらしく着座位置は高いのだが、箱根の狭い山道をややハイペースで走らせてもまったく怖くない。しっとりとした感触のステアリングを丁寧に切り込めば、車体は拍子抜けするほど安定した姿勢で曲がっていく。つまり、ユラユラせずグラッと来ない。1,830mmというコンパクトカーとしてはやや幅が広いボディも、車両感覚が掴みやすいから自信を持って寄せられるし、余裕を持って道幅を使える。ブレーキを踏んでも印象は同じ。ノーズが沈み過ぎることもなく、後ろの荷重が抜けて不安になる気配がない。安心感の高さは、ドライビングの楽しさにつながる。

18インチ・ホイールに235/50というサイズのタイヤ(銘柄はコンチネンタル・クロスコンタクトUHP)を履いた試乗車では、路面の荒れ具合などが比較的素直に足元や掌に伝わってくる。だが、表皮や大きさはともかく、アウディの上級モデルと遜色ない作りのフロント・シートが、腰や背中に伝わる不快な振動を見事に遮断。ドライビングに必要な緊張感を適度に与えつつ、快適性は損なわないという乗り心地の作り込みには感心させられた。



ただし、今回の試乗車には電子制御可変ダンパーを装備した「アウディドライブセレクト」というオプションが装着されていたから、その効果が高く好印象につながったのではないかとも考えられる。これは「ドライバーの好みやドライビング状況に応じて、走行特性を選択できる」という、今の時代の "プレミアム" なクルマにはお馴染みの "ドライブ・モード切り替え装置"。Q3では上級グレードのみに搭載することができるこのシステムは、エンジンやトランスミッション、パワー・ステアリングの特性だけでなく、足回りの固さまで可変できる、わりと高度な部類に属するタイプ。「コンフォート」にセットすればパワー・ステアリングは軽く、足回りはソフトになり、「ダイナミック」に切り替えると、ステアリングは手応えを増して、乗り心地がやや固くなる。その違いは "シートのアンコの張りが強くなった" ように感じられる程度。例えばアルファ ロメオの「D.N.A.」システムのように劇的に変わる(ノーマルに戻したくなくなる)ようなものではなかった。

だがアウディのこのシステムでは、さらに「エフィシェンシー」というモードが用意されており、こちらを選択すれば、低負荷時にはエンジンの出力を絞ったり、アクセルをオフにしたときにクラッチを切り離して慣性で走行する「コースティングモード」も駆使して燃費を向上させる(努力をする)。「ダイナミック」よりもむしろこの「エフィシェンシー」モードの方がわざわざ切り替えるだけの効果を味わえる気がした。ゆるい下りなどでアクセルを閉じていると、明らかにエンジン音が "おとなしく" なることがあり、無駄な燃料消費を抑えているのだな、という静かな興奮と知的な興味が掻き立てられる。オプション価格は20万円。燃費で元を取ることは難しいだろうが、「ユラユラ・グラッとしない」乗り味がこれに含まれる電子制御可変ダンパーによるものならば、付ける価値はありそう。購入を考えている方は、「有り」と「無し」の両方に試乗して、ハンドルをやや急激に切り返したり、強めにブレーキを踏んだりしてみることをお勧めしたい。



ワインディングのドライブを楽しめた理由の1つが、電動式パワー・ステアリングの出来の良さだ。操舵力が概ね軽いが(速度感応式)、精度の高い機械がそれゆえに滑らかに動く感触すらあって信頼感は高い。実はこのパワステには、「DSR(ドライバー・ステアリング・リコメンデーション)」と呼ばれる機能が採用されており、進むべき方向に促してくれたり、直進時には軌道を補正してくれたりするそうだ。普通に運転しているときにそうと分かるほどの介入は感じられなかったが、この安心感はひょっとしたら微妙に補正が入っているからかも知れない。だとしたら見事なチューニング。ソフトな本革巻きのステアリング・ホイールが、全車に標準装備というのも嬉しい。

フロントに横置きされるエンジンは、アウディが「TFSI」と呼ぶ(ちなみにフォルクスワーゲンでは「TSI」と呼ぶ)直噴直列4気筒インタークーラー付きターボ。排気量1,984ccから最高出力211psを5,000~6,200回転で、最大トルク30.6kgmを1,800~4,900回転という幅広いレンジで発揮する。もう1種類、基本的には同じエンジンながらチューンの違いによって170psと28.6kgmに設定された仕様を搭載するグレードも遅れて発売される予定。前者は「アウディ Q3 2.0 TFSI クワトロ 211PS」、後者が「アウディ Q3 2.0 TFSI クワトロ 170PS」と名付けられている。エンジンの最高出力がそのままグレード名になるという思い切ったネーミング。アウディジャパンの方は、Q3の「ニヒャクジュウイチ」、「ヒャクナナジュー」と呼び分けているそうだ。



今回試乗した211ps仕様は、上りの坂道でも充分パワフルに感じられ、ギアを落として回転を上げても、ガサついた耳障りなノイズや苦しげな音は発せず、1,610kgの車体をぐいぐい走らせる。ただし、デュアル・クラッチ式トランスミッションの7速「Sトロニック」は、ここぞという力が欲しいときにアクセルを開けると、唐突にシフトダウンして低いギアにつながり、その時の衝撃は同乗者を驚かせるほど。シフトダウン時に、トルク・コンバーター式やCVTのようなシフトショックを "丸め込む" ワンクッションがないからだ。

これは瞬時にギアが切り替わるSトロニックの、悪癖でもあるが長所でもある特徴だ。ショックがある代わりにタイムラグはほとんどなから、もどかしさは感じない。加速が欲しくてアクセルを踏み込むと、その増加したスロットル開度のまま、低いギアに唐突につながるからショックが発生するわけで、こういう場面(ワインディング・ロードやスポーツ走行時)では、いっそシフトレバーを左側に倒してマニュアル・シフトしてしまうことをお勧めする。つまり、手動でシフトダウン(すると瞬時にシフトチェンジを完了。その際の回転合わせも絶妙。シフトショックは皆無)させた後で、アクセルを開けてやればスムーズに加速するというわけだ。手間は増えるが、デュアル・クラッチ式トランスミッションの "美味しいところ" だけを味わえる。スポーツ仕様の「S-line パッケージ」(専用の足回りとスポーティな内外装の装備が付く。211PSでは34万円、170PSは44万円のオプション)を装着すれば、ステアリング・コラムに備わるパドルでシフトが可能だ。

もっとも、積極的にシフトをしたいような場面以外のとき、発進してシフトアップしたり、減速しながらシフトダウンするような通常走行時には、シフトショックは発生せず、またアクセルと駆動輪の間のズレ(滑り)もほとんど感じられない。これはデュアル・クラッチ式だけが味わえる独自の世界。このタイトな駆動系の感触も(そしてMTとも違って駆動が途切れないことも)、Q3をドライブしているときに感じる安心感の高さに一役買っていると思われる。

車名に「クワトロ」と付くだけあってQ3は全車4輪駆動のみ。電子制御式油圧多板クラッチ「ハルデックスカップリング」を採用したシステムで、乾いた路面などにおける通常走行時はほぼ前輪のみを駆動し、状況に応じて後輪にトルクを配分する。前回試乗記をお届けした「A6」のクワトロ・システムとは仕組みが異なるため、走り始めたときから「FFとは違う」という感じはしない。



上質な内装の仕上げは、いつも通りのアウディの美点。強い個性や楽しくなるような遊び心には乏しいが、よく目に見えるところ、手で触れるところに素材の安っぽさが感じられないように上手く作られている。1つ気になったのは、コンパクトな全長のモデルを右ハンドル化したことによるためか、運転していると左足が立派な作りのセンター・コンソールに終始触れているのが若干窮屈に感じられたこと。

それからもう1つ、先述のアウディドライブセレクトを操作するとき、モニタに表示される画面が「ダイナミック」「コンフォート」「自動」そして「効率」となっていたのを見て、分かりやすいけれどカッコがよろしくない、と思った。アウディ・インテリアにそこだけそぐわない感じである。こういうものはオーナーだけが理解していればいいのだから、「Dynamic」「Comfort」「Auto」「Efficiency」のままで(無理矢理日本語にしなくても)よかったのではあるまいか? アウディジャパンの方にはそう申し上げておいた。このとき表示されるQ3の画像が、自分がいま乗っているQ3と同じボディ・カラーになっているとさらに嬉しいと思う(アップルのiPodをパソコンに繋ぐと、その色のiPodが画面上に表示されるように)。



はじめQ3を見たとき、「どんな人が買うんだろう?」と疑問に思った。寝かされたDピラーは「都会に溶け込むスタイル」とアウディは主張するが、明らかに荷室は侵食されている。車高は上げてあるが、フロント・バンパー下部の形状などを見る限り、それほど悪路に強そうには思えない。つまり、プレミアム・コンパクトなら「A3」で十分、あるいはコンパクトなSUVが欲しければ「フォルクスワーゲン ティグアン」があるじゃないか、と思ったのだ。

アウディジャパンでは、このQ3の想定する顧客像を「アーバンライフ・エクスプローラー」という言葉で表現している。「都市生活の探求者」だそうだ。それがどんな人物像を指しているか何となく理解は出来るけれど、そういう人たちは自分のスタイルというものをすでに明確に持っているだろうし、クルマに対して目的意識がはっきりしていたら、Q3は様々な面で中途半端に見えるのではないか、という気がした。もっとはっきり言えば、"本物のアーバンライフ・エクスプローラーは、「ポルシェ カイエン」や「レンジローバー・イヴォーク」あたりを好むんじゃないかな‥‥"と思ってしまったのだ。

ところが、箱根の山道でQ3を走らせたり、あちこち触れてみたりしていたら、このクルマの魅力が段々分かってきた。そうして思ったことは、アーバンライフ・エクスプローラーよりもむしろ、休日にわざわざ出掛けることなど少なく、クルマは近所の買い物にしかほとんど使わず遠出なんか滅多にしない、というような、「エクスプローラー」からほど遠い、どちらかと言えばこれまで活動的な生活を送っていなかった人(そしてそういう生活を送っている自分に対し内心遺憾な思いを抱きつつ、半ば諦めている人)にお勧めしたい、ということである。そういう人がQ3をもし買ったら、間違いなくその人の生活は変わるだろうから。



全幅は少し大きいけれど、4,385mmの全長はコンパクトと言っていいだろう。車幅の広さはある程度慣れるが、短い全長は狭い駐車場などで絶対的に取り回しがラクだ。見た目も含めて、心理的に、乗って出掛けることに対する「億劫さ」が軽減される。着座位置が高いことから得られる見晴らしの良さや、エンジンの動力性能的余裕、派手さはないが丁寧に仕上げられたインテリア、そしていざというときにきっと頼りになる4輪駆動システムなどのQ3の特徴はすべて同様に、「乗って出掛けよう」という気にさせる効能を発揮する。今までごく一般的なコンパクトカーに乗っていた人がQ3に乗り換えれば、何となく「ちょっと遠くまで行ってみようかな」とすんなり思えるに違いない。手頃な大きさの車体と、様々な状況下でも安心感・安定感の高さを合わせ持つQ3の運転感覚に勇気づけられ、それまで自分の運転では出掛けたことがないような場所にまで行ってみれば、それこそ、その人にとって「エクスプローラー」になれる瞬間だ。Q3に乗って行動範囲を拡げれば、また新たな人や場所や趣味など様々なモノとの出会いが訪れるだろう。

ティグアンのように小型でもヘビー・デューティを感じさせるSUVや、どこから見てもBMWに見える「BMW X1」は、「自分で乗るには気恥ずかしい」と感じる人もいるはずだ。その点Q3は、「SUVにもしくは高級外車ブランドのクルマに乗っている人」と見られることをあまり強制されない外観を持っている。それでいて、例えば同窓会など、久しぶりに友人達が集まる機会に乗っていけば、それとなくアクティブで個性的で、いいクルマに乗っている、というイメージを、嫌みにならない程度で適度に振りまく効果が期待できそうだ。シックなボディ・カラーを選べば(用意されている塗装色はほとんどがそうだが)、乗って行く場所を選ばない、というのもQ3の特長だ。郊外のキャンプ場からシティ・ホテルの車寄せ、冠婚葬祭に日常の買い物まで、場違いにならないだけでなく、敢えてこのクルマを選んで乗ってきているという雰囲気まで(乗る人の服装次第で)周囲に与えることが出来る。



アウディ Q3の価格は、211PSが479万円。170PSが409万円(いずれも消費税込み)。70万円の価格差には、エンジン出力だけでなく、ナビゲーション・システムや電動シートの有無、ホイールとタイヤ・サイズの違いなどが含まれる。ファインナッパ・レザーの本革シート(ヒーター付き)とウッドパネルは30万円の「レザーパッケージ」オプションだ。

経済的にも時間的にも余裕はできたけれど、今さら何か新しい趣味を始める気にはなかなかなれない、というような大人たちに是非乗っていただきたい。若い頃、「パーティやレストランにも履いていける」と言われた外国製スニーカーをちょっと無理して購入したときに、「これがあればどこへでも、どこまでも行ける」というような、ある種の "万能感" を感じたという経験はないだろうか? アウディ Q3は、そんな高揚した気分をもう一度味わうことが出来るクルマである。


基本情報

試乗車グレード:アウディ Q3 2.0 TFSI クワトロ 211PS

全長×全幅×全高:4,385mm×1,830mm×1,615mm
ホイールベース:2,605mm
車両重量:1,610kg
エンジン:直噴直列4気筒DOHCインタークーラー付きターボ
排気量:1,984cc
最高出力:211ps/5,000〜6,200rpm
最大トルク:30.6kgm/1,800〜4,900rpm
JC08モード燃費:12.6km/リッター
トランスミッション:7速Sトロニック
駆動方式:フルタイム4輪駆動
タイヤ:235/50 R18
荷室容量VDA値:463リッター
乗車定員:5名
最小回転半径:5.7m

公式サイト:アウディ Q3

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