プジョーは、発表されたばかりの新型ハッチバック「208」に関して、3つの競技用バージョンを販売する計画があることを明らかにした。その第1弾として、ラリー用モデル「208 R2」をまず発表。モータースポーツ部門プジョー・スポールによって開発された、リーズナブルな予算でラリーに挑戦したい人向けの "マシン" だ。

プジョー 208 R2は、先代モデル「207 RC ラリー」の後継としてのワンメイク・ラリー用競技車両としてだけでなく、フォードルノーシトロエンなどのメーカーによって争われている国際的な「R2」カテゴリーに挑戦するマシンとして、さらにそのクラスの新たなベンチマークとなることを目指して開発されたという。

主眼が置かれたのはパフォーマンスだけでなく、参戦コストをいかに抑えるかという点。特にトランスミッションや電気系・電子制御系の信頼性を高めることには注意が払われたという。さらに、アスファルト舗装路面仕様からグラベル(未舗装路面)仕様へ(またはその逆にも)最小限のパーツ変更でコンバージョンできるように考えられているそうだ。



ベース・モデルとしての208は、ホイールベースが長く、オーバーハングが短いという特徴がある。ホイールベースの長さは安定性の高さにつながり、短いオーバーハングはイナーシャ(慣性)を低くできる。さらに208は先代の207と比べて車両重量が大幅に軽い。ボディ・シェル単体で約40kgも軽量だという。このことは重量バランスを最適化するためにも有利に働き、また重心の位置をより低くすることも可能になった。

さらにリア・シートや内装トリムの省略などによって、街乗り用208よりも軽量化されている208 R2だが、FIAが定めた規定によって最低重量は1,030kg、乗員込みで1,180kgと決められている。



エンジンは、ロードカー用の直列4気筒1.6VTiユニットをベースに、プジョー・スポールがフランスのエンジン・チューナーであるソデモと協力しながら新たに開発。特製のピストン、コンロッド、カムシャフトを組み込んでいる。R規定のレギュレーションではベースとなるエンジンのバルブ径を変更することができないのだが、吸気側と排気側の双方に採用された可変バルブ・タイミング機構によって、排気量1,598cc自然吸気のまま、最高出力185馬力/7,800rpmと最大トルク19kgm/6,300rpmを達成した。この数値は、ラリーではあまり使われないピーク・パワーよりも、ドライバーにとって扱いやすさにつながる柔軟な出力特性を発揮することに焦点を合わせて開発した結果だそうだ。

これに組み合わされる5速シーケンシャル・ギアボックスは、ステアリング・コラムに付いたレバーで素早く正確にシフトが可能。車体フロントのダクトから導かれたエアによって冷却されるように設計されている。プリロード型LSDが標準装備となり、ベース車と同じく前輪を駆動する。



足回りにはオーリンズ社製の3段階調整式ダンパーをこれまで通り採用し、さらに新しく専用に開発された油圧式可変バンプ・ストッパーを装着。また、サスペンション・トラベル(ホイールの上下幅)をノーマル・モデルよりも増加させることでトラクション性能を改善させている。ブレーキに関しては信頼性と経済性の面からアルコン社製シングル・キャリパーを採用。ホイールやタイヤのサイズは規定に準じたものとなる。ちなみにタイヤのメーカーはプジョー・スポールが長年タッグを組むミシュラン。

その他、車体にはボディ・シェルと一体化したマルチポイントのロールケージが組み込まれ、パワー・ステアリングはノーマルの電動式から(ギア比を速めた上で)油圧式に変更されている。これは特に滑りやすい路面で、より豊かなインフォメーションを伝えるためだ。



これだけの装備・仕様で、価格はコンプリート・カーが5万7,500ユーロ(約600万円)。ノーマルな208に組み込むためのキット・フォームとしても販売され、こちらは3万7,500ユーロ(約390万円)となっている。グラベル仕様とアスファルト仕様のどちらか選択可能であり、もちろんキットの方にも、プジョー・スポールによって組まれ、チェック済みの特製エンジンが含まれる。

実車のお披露目は、5月10日に始まるIRC第4戦ツール・ド・コルスで、「ゼロ・カー(競技車よりも先行してコースを走り最終確認を行うオフィシャル・カー)」として登場する。カスタマーへのデリバリーは2012年11月から。

気になる第2弾の "モータースポーツ用208" は「サーキット・バージョン」になり、今年9月に発表される予定だとか。第3弾も今年中には登場するという。



もっと気になるのは、「神話の復活」と銘打って登場がすでに予告されている、一般道向けスポーツ・バージョン「208 GTi」の方だが、こちらは自然吸気の208 R2よりも動力性能に関しては上回り、同じ1.6リッターながらターボの助けを借りて200馬力を発揮するエンジンを搭載して間もなく(?)発売になる、と見られている。



最近では同じPSAグループ内で専らシトロエンの担当となっているラリーに、プジョーが本腰を入れて参戦していた1980〜2000年代の頃には、高性能な公道用スポーツ・グレードの「GTi」もしくは「S16」の他に、グループN向けベース・モデルとして「205」「106」などのモデルにその名もずばり「ラリー」というグレードが設定されていたこともあった。

簡素な内外装の仕立てによって標準的なモデルよりも軽量化された車体に、ラリーの規定に合わせた1.3~1.6リッター程度のエンジンをチューンして搭載したこのグレードは、もちろんロールケージを入れて競技に参加することもできたけれど、そのまま(あるいはレギュレーションなど関係なく思い思いに手を入れて)一般道でスポーツ・ドライビングを楽しむ "走り屋" たちにも人気があった。

今回発表された208 R2を見て、そんな「もう一つの神話の復活」を期待してしまうプジョー・ファンもいらっしゃるのではないだろうか。
実はこれを書いている私もその1人である。

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