「ナロー」と呼ばれる初期の「ポルシェ 911」を、新車以上にレストア!
ポルシェ 911」と言えば、1963年のデビュー以来、年々進化を続けながら50年近くも一線級のスポーツカーとして人気と実力を保ち続けていることで知られる。「最新の911は最良の911」という言葉があるけれど、今になって見るとコンパクトで軽量な "ナロー" と言われる初期モデルにも、最新の「991」型とは違った魅力を感じる方も多いのではないだろうか。そんな "クラシック911" を新車以上の状態に仕上げて販売している岡山の「オールドボーイ」というショップの方にお話を伺った。

2月に開催された旧車イベント「ノスタルジック2デイズ」にオールドボーイが展示していたナロー911は、1972年と1973年の高性能版「911S」。当初は2リッターだった水平対向6気筒エンジンの排気量が、2.4リッターにまで拡大された頃のモデルだ。



ここでちょっと長くなるが、ナローと呼ばれる911についておさらいしてみよう。1963年のフランクフルト・ショーで発表されたポルシェ911は、排気量1,991ccから130psを発揮する空冷水平対向6気筒エンジン "フラット・シックス" をリアに搭載。3年後に軽合金鍛造ピストンを採用して圧縮比を上げるなどのチューニングを施すことで、出力を160psにまで引き上げた「911S」が追加される。

1967年になると標準仕様モデルを「911L」に改称。110psにエンジン出力を抑えた廉価版「911T」が設定され、「S」と「L」と「T」の3本立てとなる。さらにモータースポーツ用の「911R」というモデルも限定生産された。

1968年にはホイールベースがそれまでの2,211mmから2,271mmに延長され、よりワイドなタイヤとホイールを収めるためにフェンダーのホイール・アーチが僅かに膨らむ。そのため、これ以前のモデルのみを「ナロー」と呼んで区別する人もいるが、そもそも "ナロー" とは、911の登場以前からポルシェが販売していた「356」よりも全幅が狭いため、当初の911が「ナロー・ポルシェ」と俗称されていたことの名残りである、という説もある。この年、911Lは「911E」に名称が変更され、911Sと共に10psほどパワーアップ。



毎年のように改良が行われるのは今も昔も変わらない。1969年に生産が始まった「1970年モデル」では、エンジンの排気量を2,195ccに拡大。911Tは125ps、911Eが155ps、911Sでは180psへと出力が向上する。

そして2年後の「1972年モデル」は、さらに排気量が2,341ccに拡大され、911Tで130ps、911Eでは165ps、911Sになると190psにまでパワーが引き上げられる。

1973年にはモータースポーツ用ホモロゲーション・モデルとして、ノーマルで210psを発揮する2,687ccエンジンを搭載した「911カレラRS」が限定販売される。現在の911ではベーシック・グレードにもその名が付けられている「カレラ」という名称は、この頃は "実戦" 向けの超高性能モデルにだけ許された称号だった。ちなみにカレラとはスペイン語で「競争」という意味。RSとはドイツ語の「レーン・シュポルト」、英語に訳せば「レーシング・スポーツ」となる。'73年型カレラRSといえば、ナロー・モデルの中でも別格的な存在だ。



その後、1974年型から主な輸出国であるアメリカの安全基準を満たすため「ビッグ・バンパー」と呼ばれる大型の前後バンパーが装着されて外観が一新。一般的に「ナロー」とは、それ以前の1973年型までを指すことが多いのだが、実はバンパーの変更で見た目の印象は随分異なるものの、全幅の数値自体は変わっていない。

そんなすっきりしたフロント周り(リアもだけれど)が特徴のナロー911だが、最大の魅力は高回転までシャープに回るエンジン。1974年モデルでは排気量こそ拡大されたものの、最高出力の数値と発生回転数は排気ガス規制の影響でドロップしてしまっているのだ。そして現代の911と比べると300kg近くも軽い車両重量と、「トヨタ パッソ」よりも幅狭く「フォルクスワーゲン ゴルフ」より短いコンパクトな車体。さらにこの頃の911なら、クラシックカーのイベントにも出場できるし、オールドボーイがレストアした車両にはクーラーも付くという。



写真でお分かりになるだろうか、今回展示されていた2台の2.4リッター911Sは、エンジンやトランスミッションはもちろん、ボディも徹底的に分解した上でビス1本まで新品を使用し、さらに足回りの各パーツには焼き付け塗装を施して「新車状態」にレストアしている車両。電装部品は「信頼性が高いだけでなく、重量が軽い」という現代の物を使用しているので、全体的な完成度は「新車より良くなっている」そうだ。気になる価格は、レストア・ベース車両の700万円+レストア費用が800万円。合計1,500万円というから、ちょうど新車の991型「911 カレラS」を買うのと同じくらい。

ナロー911では、やはり高性能版である911Sが稀少で人気も高いため、どうしてもベース車両の値段が高くなってしまう。911Tならベース車はもっと安く手に入るが、オールドボーイの方によれば「Tにそこまでお金(レストア費用)をかける価値があるのかということになる」そうだ。



「新車状態」とか「高性能なS」とか、そこまで求めずとも、例えばちょっと旧い1990年代の「964」型に乗るような感じで "普通に乗れる" ナローは? と訊いてみたところ、「ウチには今、1971年型の911Tが550万円でありますが、それでも燃料系や電気系までやってあるので、長距離も問題なく、普通に乗れます」とのこと。

すでにナロー911をお持ちの方が車両を持ち込みでフルレストアをお願いした場合、費用は「500万円から」。ただしレストアには通常1年以上の期間が掛かるので、「ベース車を下取りにして、当社在庫車両のレストア済み911と "車両交換" するということも」歓迎だという。

ところでナロー911のしかもSといえば、「カミソリのように」と表現されるような、鋭く吹け上がり素早く回転が落ちるエンジンのレスポンスと、下手に扱うとあっという間にダメになると言われているクラッチから、運転がかなり大変なのではないかという印象があるが、オールドボーイの方によれば「(運転は)そんなに難しくはない」とのこと。「クラッチなんかは964のMTの方が難しいくらい」だそうだ。



旧いクルマの楽しみ方は大きく分けると2通りあると思う。"素材" として安価で手に入れた車両を、自ら手を汚して、いじる楽しみ。そしてもう1つは、旧き佳き時代の名車に、当時、新車で買って乗っていた人たちと同じように乗るという楽しみ。
もちろんその2つは相反するというわけではなく、ご自分で新車のようにレストアすることを目指して頑張っていらっしゃる方もいるし、レストア済みのクルマを買われた場合でもオーナーが普段から愛情を掛けてやらなくては走り続けることなど出来やしない。この趣味にかけられる「時間」「予算」「スキル」は人それぞれ違うから、"クルマと人の組み合わせ" の数だけ様々な楽しみ方がある。ただ、多くのエンスージァストの方とお会いして感じるのは、注ぎ込む「情熱」に比例して、得られる楽しみの量が大きくなることは確かだということ。

そんなクラシックカーの楽しみ方の1つ、「むかし憧れたクルマに、いま新車で乗りたい」という夢を叶えてくれそうなオールドボーイに興味を持たれた方は、以下のリンクから公式サイトをご覧いただきたい。

レストア専門工房「オールドボーイ」

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