スバルの新型スポーツカーを実路でドライブ。さて、その評価は?

【試乗記】「まるでポルシェのケイマンのような素晴らしい車」 フランスで「BRZ」を試す
2011年12月、Autoblogのライターの1人が、栃木のサーキットでスバル「BRZ」のプロトタイプに試乗した。幾分限られた条件下ではあったが、印象はかなり良かったようだ。また、兄弟車であるサイオン「FR-S」(日本名:86)を袖ヶ浦フォレストレースウェイでドライブした別のライターもその走りに非常に感動したという。"究極"を表す「zenith」の頭文字、「Z」を冠したスバルBRZが、その名に違わぬ車かどうかを見極めるために、今度はいよいよ私自身がフランスで乗り心地を試してみることになった。BRZの優れたハンドリング性能と軽量さは前評判が高いが、本当に手軽に楽しめるスポーツカーとして仕上がっているのだろうか?

このBRZの試乗にスバルが選んだ道路は、南フランスの険しい Route Napoleon(ナポレオン街道)だった。試乗に、これほどふさわしい道はない。実は私はジュネーブモーターショーのあと、気が遠くなるほど新モデルの試乗を繰り返したおかげでドライブの感覚がマヒしていた。スリルあふれる走りで車への情熱を充電したいと思っていたところだったので丁度いい。とびきりのドライビングテクニックを要するフランスの2車線道路と期待値の高い新型スポーツカーは、この上ない組み合わせだと言えるだろう。最高出力200ps、最大トルク20.9kgmが車好きの心に火を付けるようなパフォーマンスを生むのかどうかを見極めようと思う。
【試乗記】「まるでポルシェのケイマンのような素晴らしい車」 フランスで「BRZ」を試す
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《走りのたくましさにおいては、概して欧米の車の方が勝っている》

正直言って、スバルの製品の中で、いままで私が心を動かされたのはスバル「WRX STI」と「2.5 RS」だけだ。これまでに北米で発売された同社のモデルは、独特なスタイルの「Brat」と「Baja」を含めどれも高く評価されている。しかし私には全て、多かれ少なかれ無機質で人間味の少ない車のように感じられた。私は体温が感じられるような車が好きなのだ。胸が高鳴り、座面から情熱が伝わり、冒険のにおいがするような車に乗りたい。北米市場に投入される日本車は気に入っているが、走りのたくましさにおいては、概して欧米の車の方が勝っている。

スバルBRZでの初めてのロングドライブが近づくにつれ、先に試乗した他の自動車評論家やライターたちが口々に語っていた様々な批評が、私の頭の中を駆け巡り、不安になった。パフォーマンスは十分か? 私を待ち受ける無数の急カーブを着実に走り抜けるには、215mm幅のミシュラン製の夏タイヤで事足りるのか? などなど、考えはつきなかった。

しかし、蓋を開けてみれば、試乗当日シルバーの「BRZリミテッド」に乗り込んだ私と相棒は、6速マニュアル車(アイシン製)にむさぼるように乗り続けることになった。20キロも走らないうちに2人とも、ショートスローシフターを装備したこのBRZが、我々の期待以上にハイレベルな走りを見せてくれる車だということが分かったからだ。

【試乗記】「まるでポルシェのケイマンのような素晴らしい車」 フランスで「BRZ」を試す
【試乗記】「まるでポルシェのケイマンのような素晴らしい車」 フランスで「BRZ」を試す【試乗記】「まるでポルシェのケイマンのような素晴らしい車」 フランスで「BRZ」を試す【試乗記】「まるでポルシェのケイマンのような素晴らしい車」 フランスで「BRZ」を試す
ナポレオン街道を日がな一日ドライブする - そんな幸運に恵まれた経験のある車好きにこの道のことを聞けば、その魅力を息もつかずに語ることだろう。しかし同時に、実際に走らせている車ではなく、もっとスポーティーな車でドライブしてみたかったとぼやく人も少なくないと思う。しかし我々はこの日、直線や平坦な区間がほとんどないこの街道を300キロ以上走ったが、"他の車だったら"と願った瞬間は一度もなかった。BRZはこのルートを最速で走り抜ける車ではないことは確かだが、走りを堪能するスポーツカーの見本ともいうべき車だ。


《価格は半分以下だが、まるでポルシェ「ケイマン」を運転していたような気がした》

カタログやインターネット情報サイトに掲載されている数字だけで、BRZの性能に疑問を抱いている人々にぜひ知ってもらいたいのは、BRZは正真正銘のスポーツカーであるということだ。価格はおよそ211万円程度とのことだが、ナポレオン街道のような道路では、同じ価格帯の車はもちろん、倍程度の値段の車とは比べものにならないほどすばらしい走りを実現している。試乗後、スバル商品企画本部・副本部長の増田年男氏と1対1で話しながら、私は信じられない思いで首を振っていた。価格は全然違うが、まるでポルシェ「ケイマン」を運転していたような気がしていたのだ。0-100km/h加速は7.3秒程度だが(7.5秒という計測例もある)、この車の真価は直線道路での加速にあるわけではない。

増田氏は、試乗を終えた私の質問に、実に率直に答えてくれた。まずホイールとタイヤは標準装備の17インチから18インチに変更でき、その場合、リヤに限ってタイヤ幅を235mmまで広げられるとのこと。しかしフロントのタイヤは 残念ながら215mmから変更することはできないという。あらゆる路面状態で優れた性能を発揮した標準装備のダンパーとスプリングは、いずれも日本のショーワ製。フロントサスペンションはマクファーソンストラット式サスペンションをベースにBRZ専用に新開発されたもの。リヤのダンパーとスプリング、そしてダブルウィッシュボーン式サスペンションはWRX STIに搭載されているものの改良版だ。

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パッケージングと燃費が重視される傾向にある中、最近の自動車メーカーはこぞって電動パワーステアリングをスポーツカーに採用しようとしている。我々は過去半年間で数々のモデルに搭載された電動パワーステアリングを評価してきた。まず新型メルセデス「SL」のステアリングは路面感覚が伝ってこない。アウディは幾分重めだが、「重すぎる」と感じたのがポルシェ「ボクスター」。新型「911」はボクスターと同じZF製のステアリングだが、ボクスターよりも評価できる。そして最も優秀なのは新型BMW「3シリーズ」だ。しかしBRZのクイックな13:1のステアリングギア比は、ジェイテクト社製電気アクセルを伴い、相手が3シリーズであっても全くひけを取らない。事実、私は相棒が「このステアリングは最高だね。電動だということをみじんも感じさせない」とつぶやくまで、ステアリングが電動だということを完全に忘れていたくらいだ。


《BRZの超低重心と低慣性モーメントは、どんな車にもひけを取らない》

ステアリングホイールとシャシー、そして自分の耳を経由して、走りのダイナミクスを直に感じることができる反応のよさは、エンジニアの優れた決断の賜物だろう。すでに詳細をご存知の方も多いと思うが、ここで繰り返しておく。まず路面からわずか460mm という超低重心と低慣性モーメントはどんな車にもひけをとらない。相手がフルオプションのポルシェ「ケイマンS」やフェラーリ「458イタリア」であっても互角に渡り合えるだろう。これは言うなれば、トヨバル計画の基本的な第1目標だ。この性能があればこそ、他のスペックが生きてくるのだ。

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次は軽量化されたボディについて述べよう。マニュアルギアボックス搭載の標準装備での車重は1230kg。これはマツダ「RX-8」や同様の装備をしたヒュンダイ「ジェネシス・クーペ」よりも軽量で、標準仕様のシボレー「カマロV6」を450kg以上、下回っている。つまりBRZは今日のFR 2+2シーターでは最も軽量で車高が低く、それだけでも他モデルより優れていると言える。

エンジンを可能な限り低く、後部に搭載できたことは、トヨタとスバルの協力があってこそだ。新しいFA20自然吸気式2.0ボクサーエンジンは、インプレッサの2.0リッターエンジンに匹敵する驚くほどコンパクトなエンジンだが、搭載位置はインプレッサよりも約120mm低く、約240mm後部に寄っている。バッテリーはエンジンルームの中で運転席の右側にあたる部分に据えられ、前後の重量配分は53:47だ。





BRZの実路での走りは、実に悠々としていた。ノーマルモードでのビークルスタビリティコントロール(VSC)は後輪の横滑りを感知して車両を安定させてくれるが、がんじがらめの抑制ではない。ナポレオン街道の多種多様なヘアピンカーブで、気ままにテールを振る私のドライビングスタイルに合わせて、ブレーキ力がうまく制御されていた。VSCスポーツモードスイッチでレベルを選択することにより、どんなヘアピンカーブでも、よりスムーズに、ちょっとしたドリフトを楽しみながら走行することができるのだ。

それまでの走りも申し分なかったが、私はトラクションコントロール(TRC)も切り、高回転域をキープしながらドライブをしてみた。BRZの卓越したシャシーバランス、カーブでのわずかなロール、標準装備のトルセンLSD(リミテッド・スリップ・デフ)、そして直径365mmの小径ステアリングホイール――こうした装備によって徐々に運転に余裕が生まれ、道路がどんなに険しくなろうとも慌てることは一度もなかった。更にフロントホイールのキャンバー角は0度、リヤはマイナス1.2度。BRZは、あくまでも安全に自分のスキルを試してみることを可能にしてくれる車なのだ。


《RZのブレーキ、エキゾースト、そしてホイールとタイヤのカスタマイズでアフターマーケットが賑わうだろう》

ブレーキはごく普通のディスクとキャリパー(フロントは直径11.6インチ2ピストン、リヤは11.4インチのシングルピストン)だが、ブレーキ力には全く問題がなかった。スロットルをすばやく戻すと、かなり効率良くエンジンブレーキが効いたことも一因だろう。それでもブレーキやエキゾースト、ホイールとタイヤのカスタマイズをするオーナーは多いだろう。よく出来ているからこそ、走りの楽しさをより感じられる車にしたいと願うからだ。

【試乗記】「まるでポルシェのケイマンのような素晴らしい車」 フランスで「BRZ」を試す
自然吸気のボクサーは、低回転域ではポート噴射を用いるが、高回転域ではトヨタ由来の直噴も併用している。この機構では、エキゾーストはかすれ気味のテノールとなってしまう場合が多い。しかしBRZでは吸気バルブと一体となった4-2-1の排気レイアウトの採用により、スバルらしい、よりハスキーなサウンドを聞くことができた。(STIやイギリスまたは日本の特別スペックモデルを除いて、これほど気持ちのいいサウンドを楽しんだ覚えがない)。 もちろん、テールパイプが迫力のサウンドを奏でるには、回転数を上げることも必要だ。私は最高のパフォーマンスを得るために1日中、高回転域をキープしていたので、サウンドもそれに相応しいものになっていたのだろう。

BRZと86について、出力やトルクをもっと上げられなかったのか、という議論が上がるのは当然だろう。しかし、5速に入れても、頭打ちにならずに加速し続けてくれる性能を持ちながら、リーズナブルな価格を持ったBRZに「もっとパワーを!」というのは無い物ねだりだ。BRZのマニュアル車の燃費は、都市部と高速道路の平均値がリッター10.6km(AT車はリッター11.9km)。私と相棒は1日中かなり激しいドライブをしたが、なんとか平均でリッター6.8kmを達成することができた。


《ヒール&トウにピッタリのペダルポジションを備えたMT車は群を抜く魅力を放っている》

私はAT車も試してみたが、マニュアル車ほどの満足感は得られなかった。AT車の変速比1:1は4速だという点が、私にとっては論外なのだ。スポーツモードでの走りはかなりいいが、ヒール&トウにピッタリのペダルポジションを備えたMT車は群を抜く魅力を放っている。

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《「将来的には、284psまで上げようと考えています」》 

これから2年半か3年後に、BRZがターボチャージャー付きのSTIモデル風にチューンされる可能性について、増田氏に単刀直入に聞いたところ、彼の口に上った数字に私は度肝を抜かれた。「将来的には出力を284psまで上げようと考えています。ターボチャージャー付きも十分あり得ると思います。」それならば最大トルクは34.6kgmくらいまでいくのだろうか。増田氏は否定も肯定もしなかったが、そのようなモデルが完成してもSTIの名は冠さないだろうとは言っていた。

装備面で残念なのは、私が試乗した欧州仕様車に取り付けられていたデュアルテールパイプは、北米仕様車では、安全基準の関係でリアバンパーの下に隠されてしまう点だ。その他、欧州仕様車との違いは、スペアタイヤの追加、サテライトナビゲーションシステムの標準装備、そしてフルフロアアンダーカバーのオプションがないことだ。更にテールライトのアウターリフレクターは赤になり、ヘッドランプ内のインナーリフレクターはアンバーになる。最後に付け加えておくが、リヤシートは一体可倒式となっていて、これは少々不便かもしれない。

全体的に見れば、BRZはかなり魅力的な車だ。90年代後半のトヨタ「セリカ」とオペル「GT」のオリジナルモデルのファンである私の好みにピッタリ合っている。ボディーカラーと同色のリアスポイラーも申し分ない。これはリミテッドでは標準装備で、プレミアムではオプションとなる。シルバーとブルーのBRZを一日中眺めていて、唯一気になったのはテールライトの形がシボレーと似ていることだけだった。

【試乗記】「まるでポルシェのケイマンのような素晴らしい車」 フランスで「BRZ」を試す
今後、サーキットでのテスト走行でタイヤやトルク、ブレーキに関する様々な意見が飛び交うのは目に見えている。しかしBRZはレースカーではなく、あくまでクラシックなスポーツカーなのである(1970年代中頃までポルシェが提供していた廉価モデルに類する)。北米に投入される2グレードの価格はプレミアムがおよそ2万5000ドル(約205万円)から、リミテッドは2万7000ドル(約222万円)程度となる見通しだ。オプションやアクセサリーは今のところほとんど存在しない。AT車の生産は初注文の3割のみで、価格は3万ドル(約250万円)ほどになるだろう。しかし600店のスバルディーラーがあるアメリカに投入される台数が月にたった500台であることを考えると、その争奪戦はすさまじいものになることは必至だ。BMW「1Mクーペ」のように入手困難なスポーツカーとなることも十分予想される。スバルにはディーラー価格のつり上げに十分注意を払って欲しい。

トヨバルの軽量かつコンパクトな2+2シーターの3モデルが北米でもかなりの反響を呼ぶことは間違いない。中でも、私はこのBRZをお薦めする。何といってもスバルのFA20水平対向4気筒を搭載するオリジナル・モデルであり、生産がスバルの工場で行われるからだ。BRZの性能のみならず、特徴のひとつひとつや、手頃な価格設定、入手の困難さが相まって、販売はかなり勢いづくことが予想されるがスポーツカーファンにはぜひ手に入れていただきたい1台だ。

基本情報(リミテッドグレード)

エンジン: 2.0リッター水平対向 4気筒DOHC
パワー: 最高出力200ps / 最大トルク20.9kgm
トランスミッション: 6MT 0-100km加速: 7.25秒
駆動方式: RWD
車両重量: 1,230 kg
座席: 2+2シーター
荷室容量: 195リットル
EPA燃費: 市街地 約9.35km/l 、高速道路 約12.75km/l
メーカー希望小売価格: 25,500ドル(約211万円)から

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By Matt Davis
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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