富士重工業は29日、全ての軽自動車の生産を終了したと発表。1958年に誕生した「スバル360」から始まり、数々の個性的なスモール・カーを生み出してきたスバルの軽自動車の歴史が今、幕を閉じた。

ドイツ・フォルクスワーゲンの国民車「ビートル」=「かぶと虫」にちなみ、それより小さな車体から「てんとう虫」の愛称で親しまれた「スバル 360」は、富士重工業がその前身である中島飛行機時代に培った航空機技術を応用して作り上げた傑作軽自動車。1958年に標準仕様で36万5,000円という価格で発売され、1970年までの12年間で39万2,016台が生産された。僅か385kgという軽量な車体の後部に、排気量356ccから最高出力18ps(最終型では25psにまで向上)と最大トルク3.2kgmを発生する空冷2サイクル2気筒エンジンを搭載し、最高速度は90km/h(後期型オーバートップ付きなら105km/h)を記録したという。大人4名が乗車した状態で、標高差1000m近い赤城登山道路を登り切ることが出来るまで開発テストが続けられたというエピソードはあまりにも有名だ。1986年にパリのポンピドゥー・センターで開催された「前衛芸術の日本」展では、日本の4輪自動車代表として展示されたこともある。



その後もスバルは、360の後継モデルである「R2」や「レックス」、1981年にはエンジンをフロントに移した2代目レックスなどを送り出す。スバルの軽自動車は、4気筒エンジンやCVT(無段変速機)、4WD(4輪駆動)など、クラス上の小型車にとってさえ贅沢なメカニズムを採用することで特色があり、スペック的には横並びになることが多い他社の軽自動車とは一味違うモデルに仕上げられることが多かったことから、軽自動車の世界にも「スバリスト」と呼ばれる支持者たちは大勢いた。



以前ご紹介したように、1990年代には当時の軽乗用車「ヴィヴィオ」に、DOHC16バルブ・ヘッドを持つ4気筒エンジンにスーパーチャージャーで過給し4輪を駆動するという "スーパー軽" 、「ヴィヴィオ RX-R」を設定。後のワールド・チャンピオン、コリン・マクレーのドライブでサファリ・ラリーに挑戦し、一時はクラス上のラリー・カーたちを抑える快走を見せたこともある。クラシックカー風ドレスアップでブームを巻き起こした「ビストロ」や、タルガトップを持つ「T-TOP」など、ユニークなバリエーションがあったことも忘れらない。



2000年代には元アルファ ロメオのチーフ・デザイナーであったアンドレアス・ザパティナスがスタイリングに関与したと言われる個性的な2+2シーター軽「R1」と、その姉妹車で4ドアの「R2」を販売。デザインの面でも他社で主流となっていたワゴン・タイプとは一線を画したクルマ作りに挑戦した。



しかし2008年、富士重工業は軽自動車の開発から撤退することを発表する。現在販売されているスバル・ブランドの軽乗用車「ルクラ」「ステラ」「プレオ」「ディアス ワゴン」は、同じ「トヨタ・グループ」であるダイハツからOEM供給を受け、スバルのバッジを付けたクルマであり、それぞれ「タント エグゼ」「ムーヴ」「ミラ」「アトレー ワゴン」がベースとなっている。



スバルの軽自動車として最後まで生産されていたモデルが、商用車の「サンバー」だ。いわゆる "軽トラ" でありながら静粛性に優れる4気筒エンジンを搭載し、サスペンションには操縦安定性が高く乗り心地が良い四輪独立懸架を採用。フロント・ブレーキは全車ベンチレーテッド・ディスクを標準装備する。熱烈なファンも多く、昨年にはシリーズ50周年を記念して、スバルのワークス・カラーとも言える「WRブルー」に塗られた特別仕様車が限定販売されるほど愛された。2011年3月以降、スバル製軽自動車はこのサンバーだけが群馬県太田市にある本工場で生産が続けられていたが、それも2月いっぱいで終了。3月からは話題のFRスポーツ「BRZ」とその兄弟車「トヨタ 86」の生産ラインへとリニューアルされるそうだ。



小さくても明るく光るたくさんの星が生まれて来たスバルの軽自動車。消えてしまうことは残念だが、その分、これからは「インプレッサ」や「レガシィ」「BRZ」などの開発に資金やマンパワーが注がれ、ますます魅力的なモデルがスバルから誕生するはずだ。「軽からの撤退」というよりも「登録車への集中」と捉え、今後のスバル車に期待したい。


(追記:Twitterでご指摘を戴きました。R1とR2のスタイリングは日本人デザイナーによるもので、ザパティナス氏が担当したものではないという証言もあるようです。この当時、ザパティナス氏はスバルのアドバンスドデザイン担当チーフデザイナーの地位に就いており、2003年の東京モーターショーでプロトタイプ車「R1e」が発表された際にはスピーチもされていましたので、はじめに原稿に書きました「スタイリングを担当したと言われる」という一文を、「スタイリングに関与したと言われる」という表現にとどめ、訂正させていただきます)


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【捕捉】 rakugakidou.net
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