【東京オートサロン2012】ニュルブルクリンクで開発テストに使われた「日産 GT-R」!
東京オートサロン2012 with NAPAC日産ブースに置かれていた「GT-R」は、標準モデルの「ピュア・エディション」に走りの性能を上げるカスタマイズ・オプション「For TRACK PACK」が装着されていた。ドイツのニュルブルクリンクでテストに使われていた車両そのものを持ち込んだのだという。開発に関わるエンジニアの方にお話を伺って来た。

日産 GT-Rについては、もう説明の必要もないだろう。フロント・ミドに搭載された排気量3,799ccのV型6気筒ツインターボ「VR38」型エンジンが、路面状況に応じて4輪に駆動を与える、我が国切っての超高性能GTであり、「誰でも、どこでも、どんな時でも」そのパフォーマンスを楽しめる、世界に類を見ない新しいジャンルのスーパーカー。そんなGT-Rで「時にはサーキットでの走りを愉しみたいという方のために」用意されているオプションが「For TRACK PACK」である。
その内容はというと、足回りにはGT-R開発ドライバーとして知られる鈴木利男氏が主宰する「ノルドリンク」社との共同開発による専用サスペンションを組み込み、ボディにはカーボン製エア・ダクト付フロント・スポイラーを装着。軽量化のためにリア・シートは外され、レイズ製アルミ鍛造ホイールを履く。ブレーキ冷却用エアガイドや内装の一部は、走りを極めたスペシャル・モデル「スペックV」から受け継がれている。今回の展示車は、テスト車両ということで、さらにカーボンファイバー製トランク・リッドとリア・スポイラーが取り付けられていた。



担当エンジニアの方に、GT-Rの開発についてお話を伺ってみた。

このGT-Rは、ニュルブルクリンクでテストに使われていた車両だそうですが、ニュルブルクリンクという場所は、やはり、クルマの開発において特別なところなのですか?

「そうですね」

どんなところが?

「まず、高低差が大きく、それから路面のμが場所によって違います。そういう場所で開発テストをすることによって、クルマの基本性能、基礎体力が上がります」

この車両は「For TRACK PACK」というオプションが装着されていますが、標準モデルと比べて、性能ははっきりと違ってくるものなのでしょうか?

「ニュルのラップタイムでいえば、1~2秒、違ってきます」

エンジンは(ノーマルと)一緒でも、主に足回りが違うだけでそんなに差が出るものなんですか?

「ええ。例えばホイールの剛性が上がると、ドライバーが精神的に、より安心して走れるようになる。そういうことで、タイムが上がってきますね」

去年、トヨタ(レクサス)の「LFA」がGT-Rをけっこう上回るタイムを出しちゃいましたよね。悔しくないですか?

「(微笑しながら)トヨタさんとは、よく一緒に走っています。我々が出て行くのを見ると、後からあちらがついてきたりね(笑)」

現地で、メーカーの枠を越えて技術者の方同士で情報交換...といいますか、意見交換のような交流を持たれたりしているのですか?

「よく話しますよ。実は年末にも、みんなで集まりました(笑)」

次は負けないタイムを出してやろう、とか思います?

「(笑)我々は、ニュルで "タイムアタック" しているわけじゃないんですよ。"性能計測"、つまり開発を進めてアップデートした結果、どれだけの性能になったか、それを確認するんです。だからタイヤなんかも、市販車に装着されているのとまったく一緒のものを使っていますし」

もっとタイムを上げることを優先的に狙えば、それは可能だと思いますか?

「単に速くしようと思えば、もっと速くすることは可能だと思います。ですが、GT-Rというクルマは、"いつでも、どこでも、誰でも" 走れるクルマとして開発しています。トランクも広くてゴルフバッグも積めるし、スタッドレスも用意されている。そんな実用性の高さを持ちながら、ニュルに行ったら速いぞ、と。開発責任者の水野(和敏氏)という人間はもともとレーシング・カーをやっていた者ですから、速ければいいというクルマを作るのなら得意ですし(笑)、その方が楽だって言ってますね」

いつでも、どこでも、誰でも走れる、という部分や、実用性をもっと切り捨てれば、LFAにもタイムで負けないクルマが作れるぞ、と(笑)。実際、そういうクルマを作ってみたい、とは思いませんか?

「会社の人間としては、これでいいと思います。まあ、私個人としましては、"乗りこなしてみろよ!" という気持ちもないわけではないですが(笑)。日産という会社は、"安全" と "楽しさ" を天秤に掛けたら、必ず "安全" を取ります。これはもう、絶対です」

GT-Rが4輪駆動に拘るのも、そんなところに理由があるのでしょうか?

「そうですね、500馬力のクルマを安全に走らせるにはどうしたらよいか、と考えますと、2輪駆動では電子制御をたくさん入れなければならなくなる。でもそんなクルマ、つまらないでしょ。ある程度自由に走れて、しかも安全。そうすると、4WDは必須です」

ライバルとして、意識されているのは、ポルシェ911ターボあたりですか?

「GT-Rはライバルを特に想定していません。だから、参考車も買いませんよ。開発を始めるとき、我々はそれまで500馬力というクルマを作ったことがなかったですから、それがどんなものなのかを知るために911ターボを買いましたけど、それだけです」

でもクルマを買う側としましては、どうしても他のクルマと色々比較したくなるわけですが(笑)、そうした場合、GT-Rって、安いですよね。価格が、性能に対して。どうして、こんな価格で作れるんでしょうか?

「GT-Rの場合、各部品の精度が非常に高いんです。だから、変な言い方ですが、誰が組み付けても、正しく付く。正しくしか、付かない。すると、後で修正したりする必要が生じないんですね。それが製造コストを下げることにもにつながります。イタリアあたりのスーパーカー・メーカーだと(笑)、職人的な勘が必要だったり、組み上げた後から、微妙に修正してやる必要があったりするわけですよ、完成したときに想定されている性能をちゃんと発揮させるためには」

コストを下げる、ということも最初から考えられているわけですね。では、どうしてそんな安い価格で出さなければならなかったのでしょうか?

「今度のGT-Rは初めて、海外でも販売されることになりました。そうするとGT-Rは、日本国内ではともかく、世界的には伝統がない。よっぽどのクルマ好きじゃないと名前も知らない。だからブランド・イメージに頼ることができなかったんですね」

今ではかなりブランド・イメージも上がったとは思いますが(笑)、ますます世界に誇れるブランドになることを期待しています。ありがとうございました。



日産GT-Rが、どうして "ああいうクルマ" なのか。理解していただくための一助となったであろうか。どうしようもなくクルマが好きでたまらないという種類の人から見れば、その目指す方向性については、賛否あると思う。しかし、お話を聞いて確信したことは、GT-Rというクルマの開発陣には、ブレがない、ということだ。だからこそ、多少無礼な質問をぶつけてみても、お答えは明瞭・明快・明確だった。



スーパーカー」という言葉の定義が、「スーパー・カー」、つまり「非常に優れた自動車」という意味であるなら、GT-Rは紛れもなくスーパーカーである。しかし、その言葉の源流を「フェラーリ 275GTB/4」や「ランボルギーニ・ミウラ」に求め、「ナンバーを付けて合法的に公道を走れる、レーシングカーに準じた作りのクルマ」であるべきとお考えの方にとっては、GT-Rはとても「スーパーカー」とは呼べないに違いない。だが、1920年代にはベントレーブガッティがまったく別のアプローチから究極のクルマ作りを競ったように、現代ではフェラーリポルシェがあり、GT-Rがある。ロータスアリアル・アトムのようなクルマまである。どれも "走りの性能" という点において、「スーパー」であることを目指して開発されたクルマばかりだ。その中で「自分にとって最高のスーパーカー」がどれかといえば、人によって、あるいは同じ人でもそのときの年齢や環境や、はたまた気分によっても、それぞれ違ってくるのではないだろうか。だからこそ、この手のクルマは我々の心を捉えて離さない。

それにしても、ニュルブルクリンクでは日産とトヨタが交流を持ちながら互いに切磋琢磨しているときに、ドイツではなくアメリカで主に開発を進めるというホンダ NSXが一体どんなクルマに仕上がるのか、気になるところである...。

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