デロリアンと一緒に「ポモナ・カンパニー」が展示していた3台の「フォード・マスタング」。いずれも1970年代前半に生産されたモデルで、その高性能バージョンだ。

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白いボディのマスタングは、1971年にのみ作られた「マック1 429 CJ-R」。この年、マスタングには大掛かりなマイナー・チェンジが施され、ホイール・ベースを1インチを延長するとともにボディを大型化。通称「ビッグ・マスタング」と呼ばれた。「CJ」とは「コブラジェット」の略で、この頃のフォードがハイ・パワー・エンジンに付けていたニックネームである。歴代最大排気量の429 cu in(7030cc)エンジンはもちろんV8 OHV。最高出力375hpを発生する。
担当の方によると、この個体はベースをアメリカで仕入れ日本でレストアしたものだという。オリジナル状態を重視しつつも、「電動ファンを追加してデスビとプラグ・コードは対策済み」。それでも「渋滞にハマると、ダメ」だそうだ。価格は598万円。

隣のグリーンのクルマは、レース用ホモロゲーション(型式認定)モデル「BOSS 351」。1969年に追加された「BOSS」シリーズは、レースでの仕様を想定した強靱なエンジンを搭載することが最大の特徴。排気量もターゲットとするレース規定に合わせて設定されている。「BOSS 351」は、1971年からNASCARとNHRAに導入されたスモール・ブロック使用を推奨する車両ルールに則して、フォードが開発した。大径のポートとバルブを持つシリンダー・ヘッドを採用したエンジンは、5751ccの排気量から330hpを発生。減速比3.91:1のLSDを標準装備し、トランスミッションも4速マニュアルのみの設定とされた。
こちらの車両には498万円という価格が付けられていた。

赤いモデルは1973年の「マック1」。この頃のハイ・パワー車はどれも排気ガス規制に苦しんでいたが、 "マック1" の名が付くマスタングもその例に漏れず、圧縮比を落とした結果パワーは大幅ダウン。さらに馬力の表示が「SAEネット」に変わったこともあり、数値はより低くなってしまった。351 cu in(5751cc)の排気量は隣の「BOSS」と同じだが、馬力は266hpにとどまる。価格は最も手頃な348万円。この個体は水温対策がなされていることもあり、乗りやすいそうだ。このカッコが好きなら悪くない選択かも知れない。

初代フォード・マスタングは、発売が開始された1964年から1973年までのモデルを指すことが多いが、その中でも1969年と1971年の2回、外観に大きな変更が加えられた。今回「ポモナ・カンパニー」が展示していたのはどれも'71年以降のモデルだったが、この時期のマスタングは、シボレー・カマロやダッジ・チャレンジャーなどライバルの存在や、排気ガス規制によるパワー・ダウン、アメリカ消費者の大型車離れなどにより、60年代と比べ販売は低迷。1973年に起こった第一次オイル・ショックとともに初代マスタングの時代は終わりを告げ、車体も排気量も小さくなった2代目マスタングへと交代する。

ところがここ数年、1974年に公開された「バニシング in 60」という映画が一部のマニアの間で再び見直され、作中に登場する「エレノア」と呼ばれる'73年型マスタング・マック1の影響から、同時代のマスタングの人気が高まっているという。
だが、旧いクルマに乗るにはそれなりの覚悟がいる。快適性・安全性・信頼性、どれを取っても現代のクルマとは比ぶべくもない。そこで「ポモナ・カンパニー」では、現行型マスタングに旧いモデルのグリルなど外装パーツを取付け、「クラシックな雰囲気を楽しめる新車」を企画中だそうだ。

なお、マスタングの高性能版「Mach 1」は「マッハ・ワン」と読まれることも多いが、最近ではアメリカでの発音に近い「マック・ワン」の方が主流になりつつあるようなので、今回はこちらを採用した(日本では今も昔も「超音速」は「マッハ」だけれど)。