映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で有名な「デロリアン」を展示していたのは埼玉県の「ポモナ・カンパニー」
もっぱら単に「デロリアン」と呼ばれることが多いこのクルマ、正式名称は「DMC-12」という。1975年にGMの副社長だったジョン・ザッカリー・デロリアンが、理想のクルマを作るためにGMを辞めて(当時は "GMをクビにした男" などと言われた)、自ら設立した会社「DMC(デロリアン・モーター・カンパニー)」によって製造された唯一のモデルだ。

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設計はイギリスのロータス。X型(前後Y字型)鋼板製バックボーン・フレームに強化プラスティック製ボディを被せるという車体構造は、ロータスではエランなどでお馴染みの手法だ。DMC-12が他と異なるのは、そのボディの上から無塗装のSS304 ステンレス・スチールのパネルで覆ったこと。デザインを担当したのはジョルジェット・ジウジアーロだ。搭載するエンジンには、当初はシトロエンのロータリー・エンジンが検討されたというが、結局はプジョー、ルノー、ボルボで共同開発されたPRV V型6気筒エンジンが採用された。これは(アルピーヌA310にも搭載されていたとはいえ)主に中型サルーン等に使われた乗用車用ユニットで、DMC-12がそのスタイルの割りにスポーツカーとしては評価されない一因にもなっているようだ。

最初の生産型DMC-12は1981年のはじめに(やっと)発売され、その後ボンネットやホイール、内装等に変更を加えながら1982年末までに約8,500台が作られた。思いがけず短命に終わった原因は、2万5,000ドルという価格(当時のコルベットの約2倍)に対し製造品質が低かったこと、イギリス政府からの資金援助が得られなくなったこと、そして創業者ジョン・ザッカリー・デロリアンがコカイン密売容疑で逮捕されたことなど(後に無罪確定)。

その後DMC-12は、1985年に公開された映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場。タイムマシンに改造されて過去へ未来へ飛び回り、世界中で脚光を浴びることになったのはご存じの通り。

さて「ポモナ・カンパニー」が展示していたデロリアンDMC-12だが、1981年製のマニュアル・ギアボックス仕様で、内装はあの映画で使われたものと同じグレーだ。提示されていた販売価格は(これは売り物なのだ)、298万円。欲しいと思う人もいるだろうが、心配なのは購入後の維持だろう。その辺のことを担当の方に訊いてみた。

まずパーツに関しては、現在アメリカにある "新生"「デロリアン・モーター・カンパニー」から入手できるそうだ。これは当時生産していた部品の多くが今でも残っているからで、この会社ではこれらの部品を使って一から車両を作り上げることさえ可能だとか。エンジンなど動力関係は他の車種と共通だったり、汎用品が使えるので心配要らないとのこと。
このモデルの弱点は?と訊くと「電気系が弱い」ことや、「ぶつけたときにボディが板金できない」ことを挙げられた。また自慢のガルウイングは、開けた状態のときに支えるバーが壊れ、手で押さえていないと降りてきてしまうというトラブルも多いという。
ステンレス製ボディ・パネルはそれ自体は錆びにくいが「もらい錆び」が発生することがあり、手入れ方法としては「スコッチブライトで磨く」のがいいらしい。

新車の時から信頼性には問題があると言われていたデロリアンだから、所有するにはそれなりの覚悟が必要だ。だが他の旧車と比べて特に維持が大変ということはないらしい。映画を観たときから憧れを持ち続けている人には、手に入れる価値はあるだろう。タイム・トラベルは出来なくても、ドアを開けたときの注目度は抜群だ(が、ドアを閉めて走っているとあまり気づく人はいないらしい)。