前回ご紹介した「ディノ・レーシング・スペシャル」と並んで、漫画「サーキットの狼」といえばやはり「ロータス・ヨーロッパ」を思い浮かべる人も多いだろう。
「コカ・コーラ オールドナウ・カーフェスティバル」では、「グループ・ロータス・ジャパン・レーシング」によるスポーツ走行が行われ、数多くのロータス製スポーツカーがサーキットを疾走した。今回はその中から "最速のロータス・ヨーロッパ" をご紹介したい。

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正確に言えばこのクルマは「ヨーロッパ」ではない。
最初期型ロータス・ヨーロッパ S1(タイプ46)をベースにして作られたレース仕様車「ロータス 47GT(タイプ47)」である。

世界初の量産ミドシップ・スポーツカーとして1966年に発売されたロータス・ヨーロッパ S1と同時期に、FIAが定めるグループ4規定に合わせて作られたレースカーがロータス47だ。逆Y字型バックボーン・フレームは基本的にロードカーとほぼ同じだが、リア・サスペンションは当時のF1のような4リンク・ダブルウィッシュボーンに変更され、4輪ともディスク・ブレーキを装備。FRP製ボディ・カウルはより薄くて軽く、排気量1594ccから165psを発生するコスワースMk13型直列4気筒DOHCエンジンとヒューランド製ギアボックスを搭載していた。
グループ4のホモロゲーションを取得するために規定の50台以上分のパーツが用意されたが、完成車として世に出たのはそれよりずっと少ないと言われている。

今回筑波サーキットに現れた47は、当時に日本に輸入された2台のうちの1台。高野ルイのドライブで1969年の日本グランプリに出場し、クラス優勝(総合9位)に輝いた車両である。その後レースで使われなくなってからは当時のディーラーだった東急商事の倉庫で眠っていたが、ボロボロの状態で発見されたものを「テクニカルショップ・ハッピー」の先代社長が譲り受けレストアしたものだそうだ。

生産台数やヒストリーから、これが貴重な車両であることは間違いないわけだが、「ハッピー」ではこれを当時の姿に復元するだけでなく、現代のサーキットでレースに勝てる仕様を目指した。エンジンは、1980~90年代にラリーで活躍したフォード車に採用されていたコスワースYB。カーボンファイバー製のワイド・ボディやコニのサスペンション、ホイールなど「ミッション・ケース以外はほとんどすべて」別物になっているという。
1998年から2003年まで開催されていた「マイスターカップ・レース」では圧倒的な強さを誇り、幾つもの勝利を挙げている。筑波サーキットのベスト・ラップは「56秒8」だそうだ。
写真はその頃からこの47のステアリングを握っている橋澤宏選手。

「テクニカルショップ・ハッピー」には「サーキットの狼」を読んでロータス・ヨーロッパに憧れを持つ人たちが全国から訪れるという。彼らの多くは漫画の主人公が乗っていた「ロータス・ヨーロッパ・スペシャル」が目当てだが、「スペシャル」を入手した後にハッピーの47の速さを目にして憧れの対象が替わり、より初期のモデル「ヨーロッパ S2」に買い換え、47風モディファイを施す人も多いそうだ。

現在、ハッピーが扱っているヨーロッパの価格相場について訊いてみたところ、「普通に街乗りで使える」仕様で250万円から。内外装・機関をきちんと仕上げたものだと380万円からとなっているそうだ。このとき会場に来ていた美しくレストアされたヨーロッパもハッピーが販売した物だそうだが、そのときの価格は500万円だったという。
ちなみに「グループ・ロータス・ジャパン・レーシング」には47風に仕上げられたヨーロッパ S2も多く見られたが、これは改造費だけで800万円~1,000万円とのこと。もともとS2はルノーのOHVエンジンを搭載しているが、これらは2リッターのツインカム・エンジンに換装されているという。ナンバープレートが付き公道も走行可能というから驚きだ。ただし、ロード・クリアランスは極小だからオーナーは非常に気を遣うことだろう。

「サーキットの狼」では、非力なロータス・ヨーロッパで排気量もパワーも格上の相手に打ち勝つというストーリーが人気だった(最近のクルマ漫画でも似たものがあるような‥‥)。この日、筑波サーキットに集まったヨーロッパたちは、ポルシェ・ターボや12気筒スーパーカーに勝つことも不可能ではないかも知れないと思わせるような速さを見せていた。
特にミズスマシのようなコーナリングと、テールをやや沈めて鋭く立ち上がる加速は特筆もので、まさしく「ロータスの狼」が現実になったかのよう。

縦置きエンジンと非現実的な車高の低さ。「エリーゼ」ではなく、どうしても「ヨーロッパ」でなければだめだという人がいるのは、一概に漫画の影響だけとは言えないようだ。