ハチロク専門店の「チューブ・ガレージ」が展示していたトヨタ・スプリンター・トレノは、かつて400台が限定発売された「ブラック・リミテッド」。希少なワン・オーナー車で、どこにも手が加えられた形跡のない、まったくのフル・ノーマル。もちろん修復歴なし。ブラック・リミテッド専用色のボディも塗り直されることなく、オリジナル・ペイントの状態を保ち、ステッカー類までそのまま残されていた。

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走行距離は8.2万kmだが、そんなに走っているようには見えない。「新車のようだ」とは流石に言えないが、それでもせいぜい「2度目の車検を迎える頃」くらいにしか見えなかった。

トヨタが1983年に発売したAE86型「カローラ・レビン/スプリンター・トレノ」通称 "ハチロク" は、1600ccのDOHCエンジンを搭載する後輪駆動車で、比較的手の届きやすい価格で販売されたことから、スポーツ・ドライビングを指向する多くの人々に愛され、現在でもその人気は衰えるどころか再燃しているほどである。
今では人気コミック『頭文字D』で主人公が乗るトレノを欲しがる人が多いようが、当時は固定式ヘッドランプを持つレビンを好む人の方が多かった。そのためトヨタは、1986年に販売のテコ入れとして、3ドアのトレノに限定仕様車を設定。標準モデルでは選べなかったブラックの外板色にゴールドのアルミ・ホイールを組み合わせ「ブラック・リミテッド」として400台を販売した。

チューブ・ガレージの展示車には、このホイールもそのまま装着されており、各所に貼られたゴールドのステッカーや、ピン・ストライプもきれいに残っている。シートに入れられた「APEX」の刺繍はこの限定モデルだけの仕様だった。
とても24年の時を経ているとは思えないこの "奇蹟のハチロク"、価格も驚きのなんと450万円(!)。買うことは無理でも、一見の価値ある貴重な個体である。

チューブガレージでは先日も走行距離1万キロ台(!)というハチロクを販売したそうだが、いったいどうやってにこれら希少な車両を "発掘" してくるのかと訊いてみたところ、だいたい次のようなケースが多いらしい。
20数年前に新車で買ったオーナーがそれなりの年齢となり、今ではもう乗らなくなったまま納屋などに置かれていたクルマが、地元のトヨタ販売店に下取りもしくは引き取りを依頼される。そこで査定に困った全国各地の販売店が「お宅ならどれ位の金額で引き取ってくれる?」とチューブガレージに連絡してくる、というわけだそうだ。

クルマにとっても、オーナー(とその家族)にとっても、販売店にとっても、もちろん程度の良いハチロクを探している人にとっても、これは幸せな話ではないだろうか。