こちらも「オールドボーイ」のブースに展示されていた「RUF NATO」。
妖しい艶消しの軍用色に塗られたこのポルシェ・ターボは、RUFが製作したコンプリートカー「BTR」の、開発用プロトタイプとして作られた個体である。

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アロイス・ルーフ率いる「RUF」は、ポルシェをベースとした高性能車の製作で有名だ。ポルシェ専門のチューニング・ショップとして成功を収め、1981年にはドイツ連邦から「自動車会社」として認可されるに至った。単なる「チューナー」ではなく「メーカー」なのである。
1987年、アメリカの「ロード&トラック」誌が行ったテストで、「RUF CTR」通称 "イエローバード" は市販車最高速度記録となる339.9km/hをマーク。RUFの名は世界的に知れ渡ることになった。

BTR(ビッグ・ターボ・ルーフ)は、そのCTRの前にルーフが開発した最初のコンプリートカー。ポルシェ911ターボ(930型)に積まれるフラット6のボアを広げ、インタークーラーと大径タービンを装着して最高出力374ps・最大トルク49.0kgmを発生。最高速度は280km/hと発表されたが、実際には300km/hオーバーを記録したという。

このBTRを開発するときに、プロトタイプとして作られたのが「NATO」である。その名前はNATO軍を思わせるオリーブドラブの艶消し塗装から付いたニックネームで、開発用車なので目立たないようにこの塗装が施されたと言われている。
右側のリア・フェンダーに見られるリベットは、テスト中にクラッシュした箇所を修復した跡。プロトタイプなので、綺麗に板金する必要がなかったため、このようにリベットで処理されたのだという。
RUFでは、テストが終了しお役御免となったこのクルマを廃棄処分しようとしていたところ、当時の日本の代理店「石田エンジニアリング」が引き取り、それ以来日本に棲息しているのだそうだ。

オールドボーイですべてバラして組み上げたというこの車両、とても過酷なテストに供されたとは思えない状態に仕上がっている。"新車と見紛うほど" とは言えないが、クルマの性格と歴史を考えればこれでいいのだろう。法的にもクリアしナンバープレートを取得する予定だという。価格は明記されていなかったが、新車のポルシェ911ターボを買うよりは安そうだ。

スペックは市販型BTRにほぼ準じていると思われるが、詳細はまったく不明。正真正銘世界に1台の、貴重でミステリアスなクルマである。