ホンダのブースには3台のインサイトが並んだ。ホンダアクセスが手がける純正ディーラーオプションを装着したインサイト・モデューロ、2009年9月に開催された耐久レースイベント「JOY耐」参戦車両のインサイト・ツーリングモデューロ、そしてその実戦で得られたデータをフィードバックして開発されたインサイト・スポーツモデューロだ。
その開発コンセプトは「エコスポーツ」という新たな分野の確立。「エコ=我慢ではなく、クルマが持つ環境性能を生かしつつエキサイティングな走りも楽しめる」(資料より)ことを目指したという。トヨタからもよく似た言葉を聞いた気がするが、開発の中でモータースポーツの現場に投入し、レースによって得られたデータを重視するという辺りがホンダらしいと言えなくもない。

このコンセプトカーでまず目を引くのは、前後ホイールに装着されたエアロフィンだろう。どの程度効果があるのか担当者に話を聞いてみた。

Q:確かに空力に効きそうには見えますが、本当に効くんですか?
A:かなり効きます。ちゃんと風洞実験で作り込んであの形になったわけですから。街中を流す程度でも効果があります
Q:具体的にはどんな効果が?
A:空気を整流し、タイヤ周りから出る空気とのバランスでハンドリングが良くなります。直進安定性も向上します。
Q:燃費も良くなるわけですね?
A:燃費には難しいですね。
Q:そうなんですか!?
A:インサイトはすでに基本が完成度高いですから、そこから空力性能を上げてさらに燃費が良くなるかというと、難しいです。パーツを付加すれば重量増にもなりますから。例えばトランクにゴルフバッグを積んでいたら、それを降ろした方が燃費は良くなります。

お話を伺うことで、ハイブリッドカー・チューニングの方向性がよりはっきりと見えた気がする。
現代のエコカーは、燃費に関してはやるべきことはすべてやり尽くしてから市場に出ると言っていいだろう。後からチューンしても、さらなる向上は望めないということだ。逆に走りの楽しさについては、伸びしろを残したまま製品化されることもあるわけで(もちろんコストや時間の制約もある)、「どれだけ燃費を落とさずに走りの質を上げられるか」が今後のハイブリッドカー・チューンの主題となるのではないか。

このインサイト・スポーツモデューロは、ベースとなったインサイトのボディ自体には手を加えておらず、全てボディパーツのみで仕上げられている。だから製品化されればすでに自分で所有しているインサイトにこれらのパーツを付けることも可能なはずだが、このボディパーツは全部装着した上で意図した空力性能を発揮するため、一部パーツのみの販売は考慮されていないという。その辺りのこともあって市販化は未定だ。
またサスペンションには5段階減衰力調整ダンパーが採用され、走る状況に応じて調整出来るようになっている。サーキットだけでなく街中でのスポーツ性能を追求するため、ヨーロッパの様々な道路でテストを実施したそうだ。

なお残念ながら今回、CR-Zの展示はなかった。トヨタはFT86を持ち込んだのに‥‥と言いたいところだが、正式発表直前の微妙な時期に「コンセプト」として出すわけにもいかないだろう。来年はホンダブースに限らず会場のあちらこちらでCR-Zを見ることが出来るはずだ。