16日、メルセデス・ベンツ(ダイムラー社)はF1チーム「ブラウンGP」を買収し、来期は「メルセデス・グランプリ」の名で参戦することを発表した。

ダイムラーはブラウンGPの株式を45.1%、ダイムラーの筆頭株主であるアブダビの投資会社アーバル・インベストメンツが30%取得。ブラウンGPのロス・ブラウンとニック・フライその他が残りの24.9%の株を維持する。買収金額はダイムラーとアーバル合わせて約1億1000万ポンド(約165億円)とみられている。
現在ダイムラーが保有するマクラーレンの株式40%は、2010年までにマクラーレンによって買い戻されるという。また、マクラーレンに供給されているメルセデス・エンジンは、少なくとも2015年まで供給が続けられる。
一時はメルセデスによるマクラーレン買収が噂され、またメルセデスのF1撤退も危惧されていたが、今回はこういう形でシルバー・アローの復活となった。
経済不況による影響で多くの自動車メーカーがF1から撤退する中、メルセデスの自社チームによる参戦は意外な気もするが、今回の決定は「メルセデス・ベンツ」というブランドイメージの強化を目的の第一に挙げるとともに、FOTAとFIAによる「資源制約」によってレーシングカーの開発・製造コストが効果的に制限された上、新コンコルド協定に調印したことを受け、レース開催の商業権により発生するチームの収益が大きく増える見込みであることをダイムラーのディーター・ツェッチェCEOは言及している。
つまり、支出が減り収入が増えるはずということだ。
メルセデス・ベンツはエンジン・サプライヤーとしてF1に参戦しているが、優勝してもドイツ国歌が流れないことがドイツ国内の新聞では記事になったこともある。
ダイムラーにとっては勝てるチームがマクラーレンより遥かに安い金額(3分の1程度とも言われている)で手に入る今がチャンス、ということかも知れないが、それが1年前にホンダが手放したチームであるというのも皮肉な話である。

近年に於けるメルセデスのF1への関与は、1993年にザウバーがF1初参戦した際「コンセプト・バイ・メルセデス・ベンツ」という文字がカウルに書かれたことから始まっている。'94年にはメルセデス自身が正式にF1参戦を表明。エンジン製造会社のイルモアに資本参加しメルセデス・ベンツ・エンジンをザウバーに供給するもわずか1年でマクラーレンに乗り換え、'98年にはミカ・ハッキネンがチャンピオンを獲得。2008年にルイス・ハミルトン、2009年にジェンソン・バトンがメルセデス・エンジンでチャンピオンになっている。

メルセデス・チームとしてのF1参戦は1954年に遡る。ファン・マヌエル・ファンジオを擁して、'54年~'55年に出走した12レース中何と9勝という圧倒的な強さを誇り、2年連続してファンジオをチャンピオンへと後押しした。

シルバー・アローと呼ばれる由縁はそれよりさらに遡る1934年、ニュルブルクリンクで開催されたレースでのこと。規定重量をわずかにオーバーしてしまったメルセデス・チームは、当時ドイツのナショナル・カラーであった白いボディの塗装を全て剥がし車重を削減。露出した銀色のアルミ地にゼッケンを貼って参戦・優勝したという逸話によるものだ。

メルセデス・ベンツがチームとして参戦する時、シルバーのボディカラーと優勝は譲れない「決定事項」なのである。