アレック・ボールドウィンが、2005年に開設した大人気の政治ブログ、Huffington Postに「The rise and fall of Detroit(デトロイトの盛衰)」というコラムを執筆した。この中で彼は、デトロイトにある自動車メーカー大手、いわゆるビッグ3を見限る発言をしている。
多くのアメリカ人と同じように、税金を投入してこれらの自動車メーカーの建て直しを図るのは断固反対らしい。しかし、彼の主張の根本は燃料経済にあるようだ。下記に一部を抜粋してみた。

 「経営陣たちは過去30年間、ベッドに体を横たえて眠るのもままならず、真夜中に愛妻の顔を見ながら『自動車に対するアメリカ国民のニーズに応えるにはどうすべきか? 安全性を高め、燃費を上げる良い方法はないだろうかと常に自問自答してきた』そんなはずはない!」

しかし、ボールドウィンのこの酷評には考慮されていない事実もあるので、ここで我々と一緒に分析してみよう。

まず安全性についてだが、そもそも3点式シートベルトを発明したのはアメリカ人なのをご存知だろうか。初めてシートベルトを標準装備としたのはサーブそしてボルボと、アメリカの自動車メーカーではなかったにしても、1968年までにはすべての車のフロントとリアシートに標準装備されることとなった。エアバッグについてもその登場は1951年までさかのぼり、初めて特許が申請されたのはドイツとアメリカだ。その後、1971年にフォードがエアバッグシステムのフリートテストを実施し、1973年にはゼネラルモーターズがOldsmobile Toronadoにオプションとして搭載した。そしてエアバッグが標準装備となったのは、1988年のクライスラーが初めてなのだ。

さらに説明すると、1950年に触媒コンバーターを発明したのはアメリカ在住のフランス人であった。その当時、ロサンゼルスの人々を悩ませていた慢性的な光化学スモッグを目にしたことが、開発のきっかけとなったようだ。しかし、ガソリンに含まれる鉛とリンをごく微量な水準にまで削減しなければ有効性がなかったため、このコンバーターが実用化されることはなかった。しかしその後、ニュージャージー州にある会社が1973年に触媒コンバーターの生産に成功した結果、1975年には米国内で生産される全車に標準装備されることとなった。

話をボールドウィンの記事に戻そう。彼は、デトロイトのビッグ3はもう何十年にも渡って国から援助を受けてきたと述べている。というのは、アメリカが石油を大量に手に入れるために、軍隊が「石油の潤沢な国を政情不安に陥れたり、もしくは侵攻したりして」かなりの軍事費を計上してきたからだそうだ。

しかし、石油消費が大量だという問題がなぜ、すべてビッグ3の責任になるのか理解に苦しむ。まず始めに、アメリカにおける石油消費量のうち約55%が輸送にあてられているのは事実だが、この数字にはトラックや飛行機、電車なども含まれている。次に、冬になるとアメリカ北東部でよく使われる暖房用の灯油は、およそ800万世帯でしか使用されていないにもかかわらず約25%を占める。それなのに、メディアがこぞって非難するのは自動車業界なのだ。

確かに燃費のいいハイブリッド車においては、ホンダやトヨタがビッグ3よりも先見の明があったことは事実である。それでも、ビッグ3が何も手を打っていなかったわけではない。フォードのフュージョンハイブリッド(日本未発売)は先月、市街地で1ガロン(約3.8ℓ)41miles(66km)と燃費世界一を達成した。これはカムリハイブリッド(日本未発売)より8miles(13km)も燃費がいいのだ。また2010年型シボレー・エクイノックスは高速走行時には1ガロン32mile(51km)の燃費をうたっており、他のミッドサイズクロスオーバーと比べても圧倒的な良い数値となる。それに加えてアメリカ国内でハイブリッド車が占める割合はたったの5%以下。ハイブリット以外の車だけを比較した場合、どのメーカーも燃費に関して大きな違いはない。つまり、ハイブリッドさえ作ればいいという話ではないのだ。

ボールドウィンは自分の車についても言及している。90年代初期の愛車はシボレー タホだったが、現在はプリウスだそうだ。今は新たな車を探しているそうだが、アメリカ南部で組み立てられた日本製のハイブリッド車を検討しているらしい。その条件に合致するものといえば、カムリハイブリッドしかないだろう。しかしアメリカ製なら、カンザスシティーで組み立てられているエスケープハイブリッド(日本未発売)だってある。彼にはもう少し広い視野で選択肢を持って欲しいものだ。